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田坂具隆監督没後50年展覧会、7日東京で開幕 「土と兵隊」「五番町夕霧楼」数々の名作残す

スポニチアネックス 2024年9月6日 20時36分

 「土と兵隊」(1939年)、「五番町夕霧楼」(63年)など数々の名作を残し、74年10月17日に72歳で永眠した田坂具隆(ともたか)監督の没後50年を記念した展覧会がきょう9月7日に東京・京橋の国立映画アーカイブで開幕する。

 「ぐりゅうさん」の愛称でも知られた田坂監督はサイレント時代の26年に「かぼちゃ騒動記」でデビュー。「真実一路」(37年)、「路傍の石」(38年)といった文芸作品でヒューマニズムあふれる作風を確立し、「五人の斥候兵」(38年)からは人間味に満ちた戦争映画の作り手としても名を馳せた。

 1945年8月6日に広島で被爆。長く原爆症に苦しみながら再起を果たし、数々の撮影所でスターの育成に注力。左幸子主演の「女中ッ子」(55年)、石原裕次郎と北原三枝(のち石原まき子さん)が共演した「陽のあたる坂道」(58年)、中村錦之助(のち萬屋錦之介)主演の「ちいさこべ」(62年)、佐久間良子(85)主演の「五番町夕霧楼」などの話題作を発表した。

 今回、関連企画として10月8~20日、11月5~24日まで、現存するすべての作品の上映会も予定されている。文芸作から戦争映画、青春もの、時代劇まで、一貫して小さきもの、弱きものに寄り添う作風は、社会の不寛容さが増す現代にこそ強く輝きそうだ。

 国立映画アーカイブによると、田坂監督が亡くなった5年後の1979年に特集上映を行ったことはあるが、展覧会と上映会を合わせて実施するのは初めてという。

 展覧会は第1章「小さきものへの眼差し 明治~昭和初期の子どもたち」、第2章「戦争と人間と」、第3章「小さきものへの眼差し 戦後の子どもたち」、第4章「文芸映画にみる戦後の再生」、第5章「ひと・暮らし」の5章で構成。

 展示物は約170点に及ぶ。「路傍の石」や「土と兵隊」など田坂作品に欠かせないスター俳優・小杉勇が使用した「五人の斥候兵」の台本や、田坂監督が撮る予定だった「ビルマの竪琴」の3段階にわたる台本、監督と夫人の女優・瀧花久子が収集した郷土玩具の数々、そして映画化されずに終わった「石狩平野」のポスターなど貴重な資料が目白押しだ。

 「没後50年 映画監督 田坂具隆」と題した回顧展。中村嘉葎雄(86)、芦川いづみ(88)、佐久間良子ら田坂作品を彩った俳優たちの協力を得られたのも大きい。年内には「ぐりゅうさん 映画監督田坂具隆」も図書刊行会から出版予定という。展覧会は11月24日まで開催。(一部敬称略)

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