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「逃げたらアカン!」 U18日本代表が納得しなかった「0%」のジャッジ 元NPB審判員記者が解説

スポニチアネックス 2024年9月8日 4時2分

 ◇第13回U18アジア野球選手権・スーパーラウンド  日本0-1韓国(2024年9月7日 新荘)

 高校日本代表は7日、スーパーラウンド2戦目で韓国と対戦。0―1で敗れ韓国、台湾と2勝1敗で並んだが得失点率差(TQB)で1位となり、決勝進出を決めた。6回に先制を許し、なおも2死一、二塁から登板した今朝丸裕喜投手(3年=報徳学園)が、1回1/3を無失点の好投を見せ、1点差にとどめたことで1位を死守。16年以来8年ぶりの優勝をかけ、台湾と激突する。

 優勝を狙う日本にとって「致命傷」になりかねなかった判定があった。元NPB審判員の記者が解説する。

 韓国は5回1死から8番打者が三塁線を抜けていく痛烈な打球を放った。内野のフェアゾーンから三塁ベースを越え、左翼のファウルゾーンへ転がる打球。この場合、「フェア」、「ファウル」の判断基準はベースを越える時点で打球がフェアゾーンにあったか、にある。

 打球の責任を負う三塁塁審のジャッジに注目が集まったが、まさかのノージャッジ。また三塁塁審が打球を見失った場合などに補助的な役割を担う球審もジャッジを行わなかった。韓国の打者走者は一塁を蹴り二塁へ。日本の守備陣も打球を処理したが、三塁手・山畑らが「ファウル」を猛アピールした。

 球審、三塁塁審は協議した後、「フェア」を最終裁定とした。これには日本も納得がいかない。小倉全由監督も通訳とともに判定の確認を行ったが覆ることはなかった。直後の右飛で二塁走者が三塁タッチアウトとなり、日本はピンチを脱した。

 結果的に試合は1―0で韓国が勝利するも、日本はTQBにより決勝進出を果たした。ただ、2点差以上の負けとなれば決勝進出を逃していた日本。仮に「誤審」があった場面で失点していれば、アジア制覇の夢は消えていた。

 審判員は技量を高めることと、同じくらいプレッシャーに強くなることを求められる。いくら本来の判定技術が高くてもプレッシャーに打ち勝って己の力を発揮できなければ、宝の持ち腐れである。

 NPB審判員の中では誰もが1度は言うセリフがある。「目ぇつぶってジャッジしても50%の確率で正解なんやから!」。誤審をして落ち込んでいる仲間への励ましで「ネガティブになりすぎるな」が本意。少しでも仲間のプレッシャーを軽減したい、と思ってかける言葉だ。もちろん皆、「いかに判定精度を100%に近づけるか」が仕事であると理解している。ただ、この言葉は深い。ジャッジからは逃げられないが、ジャッジさえすれば、野球の神様は「アウトかセーフ」、「ストライクかボール」で50%で正解できるチャンスをくれる。まさに「逃げたらアカン」の精神なのだ。

 今回のケースは判定の正否よりもジャッジしなかったことが問題だ。たとえジャッジしなかった後に「ファウル」としても、今度は韓国側が猛アピールをしただろう。野球の神様も、チームも、判定から逃げることを許してはくれない。

 U18アジア選手権は8日の日本―台湾の決勝で幕を閉じる。担当する審判員には「目ぇつぶっても…」の精神で100%を目指してほしい。(元NPB審判員、アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)

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