9日(日本時間10日)から11日(同12日)まで、ニューヨークでヤンキースとロイヤルズの3連戦が行われている。注目はアーロン・ジャッジとボビー・ウィットが直接対決することだ。
ファングラフスのWAR(勝利貢献度)では2人は現在9・6で並んでいる。ア・リーグMVP争いでトップの2人がどんなプレーを見せるのか?大リーグ公式サイトのマイク・ペトリエロ記者はウィットがMVPを獲得する可能性はたぶんないと言い切っている。ジャッジが60本塁打を目指して、歴代トップ10に入るバッティング成績を残しているからだ。
ウィットはジャッジに比べて守備が圧倒的に優れており、ベースランニングでもはるかに価値があり、30本塁打、28盗塁、打率・336だ。30-30達成目前で、日本的に言えばトリプルスリーもほぼ確実である。それでも記者たちの1位票はほとんどが60本塁打のジャッジに行くと見ている。
ペトリエロ記者の関心は、通常であればMVPに値するウィットの今季の成績が、歴史的にみて、どれだけ素晴らしいかということ。9・6のWARはこの調子を維持すればシーズン終了時までに1ポイント近くが加算され、仮に10.5WARのシーズンになるとする。そうであれば史上25番目に優れたシーズンになるという。そしてMVPはWARだけで選ばれたりはしないが、単に「WARでMVP受賞者を超えた年」の割合をみると、90%以上の確率でウィットは超えていたそうだ。
とはいえ、ウィットが史上最も不運な選手になるわけではない。他にもWARがよかったのにMVPに選ばれなかった選手はいる。1931年のベーブ・ルースは10.7WARだったが、31勝4敗、アスレチックスのレフティグローブ投手に敗れた。グローブのWARは7・1だった。34年のルー・ゲーリッグも10.7WARだったが、タイガースのミッキー・カクレーンの3・9WARに敗れた。カクレーンはその年監督兼捕手で優れたリーダーとして評価された。1941年のテッド・ウィリアムズは11WARで9・7のヤンキースのジョーディマジオ、1942年もウィリアムズは11.5WARで、8・7のヤンキースのジョー・ゴードンに敗れた。
言うまでもないが、当時WARという概念はなかったから、後になって計算したものだ。そしてこの4人は全てその年のペナントレースを制したチームから選ばれている。同じ記者投票であっても、当時の記者の判断基準は今と全く異なっていたのである。