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話題作「侍タイムスリッパー」主演・山口馬木也 藤田まことさんに学んだ役者の心

スポニチアネックス 2024年10月8日 4時3分

 単館上映から全国150館以上まで広がった話題の映画「侍タイムスリッパー」(監督安田淳一)で初主演を務める俳優の山口馬木也(51)の演技が注目を集めている。NHK時代劇「大富豪同心」での演技に惚れ込んだ安田監督が直々にオファー。山口は本紙の取材に「自分でもよく分かってないんですよ。運です、としか言えないんですよね」と謙虚な姿勢を見せた。

 雷に打たれた幕末の侍が現代にタイムスリップし、京都の時代劇撮影所で「斬られ役」として生活していくストーリー。今年8月に池袋シネマ・ロサで上映されると、自主製作映画ながら山口の圧巻の殺陣が口コミで“全国区”に。低予算かつ小規模でシネマ・ロサから全国に広がったこと、テーマが映画であることなどから「第二の『カメラを止めるな!』」とも呼ばれている。

 山口は03年から10年に時代劇ドラマ「剣客商売」に出演。同作で演じた秋山大治郎の父・小兵衛役で主演したのが「必殺」シリーズで知られる藤田まことさんだった。「藤田さんからは役者としての心の部分を学びました」と振り返る。料理を振る舞うシーンで、器の中の小道具がバラバラになっているまま演技を続けたある役者に対して「心がない」と怒ったことが印象的だったという。「藤田さんはうそをすごく嫌っていた。“あなたのために美味しい料理を作った”とうれしそうに言うシーンなのに中身がバラバラじゃ気持ちが伝わらない」。「侍タイムスリッパー」で見せた、本物の侍かと見間違えるほどの所作は「まさに藤田さんの教えからきています」と恩師の教えのたまものという。

 また「剣客商売」の殺陣を担当していたのは、三船敏郎さんに師事し、黒澤明監督の作品にも出演した伝説の殺陣師・宇仁貫三さん。黒澤作品の殺陣を手がけた久世竜さんに師事していた宇仁さんから、殺陣の技術はもちろん、日本映画の大家のイズムが継承された。

 そんな山口が初めて時代劇を学ぶことになったのは黒澤監督の愛弟子である小泉堯史監督がメガホンを取った2000年の映画「雨上がる」だ。「乗馬と立ち回りができること」がオーディション参加の条件だったが、当時の山口はどちらも未経験。「“馬に乗れますか?”って聞かれて“名前に馬が入ってるんです。乗れないわけないでしょう”と言い張りました。絶対にダメなことなんですけど…うそをついてました」と内心ヒヤヒヤで、黒澤イズムみなぎる侍の世界に飛び込んだ。

 「時代劇がなかったら役者を続けられていなかった」と語る山口。うそから始まった時代劇が、レジェンドたちの教えを受け、20年の時を経て花開いた。9月には「SHOGUN 将軍」が米エミー賞で史上最多18冠を獲得。時代劇に世界的な注目が集まる今、日本の時代劇の心と太刀さばきを持つ“侍”の活躍を期待せずにいられない。 (塩野 遥寿)

 ◇山口 馬木也(やまぐち・まきや)1973年(昭48)2月14日生まれ、岡山県出身の51歳。98年の日中合作映画「葵花却(ひまわり)」(監督蒋欽民)でデビュー。2000年には「三人姉妹」(演出蜷川幸雄)で初舞台を踏む。以降、NHK大河ドラマ「八重の桜」、TBS「水戸黄門」など舞台、映像問わず多数の作品に出演。

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