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【内田雅也の追球】「鬼」のいぬ間の練習 「やるべきこと」淡々とこなす虎戦士

スポニチアネックス 2024年10月10日 8時0分

 阪神の選手や首脳陣がいるグラウンドに着いて全体を見渡す。居場所はすぐに分かる。

 「存在感やなあ」と元球団社長の南信男がキャンプ地の沖縄・宜野座村野球場で話していたのを思い出す。「どこにいるのか探さないといけないわけではなく、目に飛び込んでくる。岡田監督はそんな監督だった」

 わかる気がする。だから9日朝、甲子園球場のグラウンド、室内練習場での異変もすぐにわかった。監督・岡田彰布がいないのだ。

 前日8日の練習中、岡田が「しんどいんや」と漏らしていたので心配していた。今季限りでの退任が決まり、疲れが出たのではないだろうか。そう言うと「さあ」と苦笑いしていた。練習後に病院に向かっていた。

 球団広報から体調不良で休むとの発表があった。風邪だという。9日と全体練習を休みにしていた10日を静養、回復に努め、11日に復帰する予定という。12日にはクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージが始まる。

 「オレは風邪なんかひいたことないで」と自慢していた岡田である。練習や試合を休むなど初めてのことだ。鬼の霍乱(かくらん)である。

 練習は滞りなく進んだ。夜来の雨で朝はグラウンドが使えず、室内でフリー打撃を行った後、外に出てシート打撃を行った。監督不在でもやることに変わりはない。選手たちは遠ざかる実戦勘を取り戻そうと、投手は打者に対し、打者は投手に対していた。

 岡田は昨年優勝した際、「選手たちが自分のやるべき役割を理解していた」と話していた。練習でも、「やるべきこと」を淡々とこなす。「岡田の野球」を理解した選手たちがいた。

 昨年の開幕直後、球団本部付スペシャルアシスタント(SA)の藤川球児が「選手たちに岡田監督の血が流れだした」とテレビ解説で話していたのを思い出す。ちなみに藤川は次期監督の最有力候補である。

 岡田の教えは今や血となり、肉となっている。「鬼」がいなくても血が通っている。

 「何も言うことはないよ」と練習を指揮したヘッドコーチ・平田勝男が話していた。この日シート打撃に登板した高橋遥人を「休養十分だったね。岡田監督も休養十分で戻ってくるよ」と笑った。夕方、岡田はずいぶん回復したとの連絡があった。

=敬称略=(編集委員)

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