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大山のぶ代さん死去 90歳、老衰で 直腸がんと認知症…入退院繰り返し 国民的アニメ声優26年

スポニチアネックス 2024年10月12日 4時31分

 人気アニメ「ドラえもん」の声を四半世紀にわたって演じ、国民的な人気があった声優の大山のぶ代(おおやま・のぶよ、本名山下羨代=やました・のぶよ)さんが9月29日午後4時23分、老衰のため都内の病院で死去した。90歳。東京都出身。葬儀は親族で行った。「ぼく、ドラえもん」のせりふを子供たちがまねするなど、愛嬌(あいきょう)あるだみ声は広く親しまれた。

 大山さんは今年に入ってから体調を崩しがちで、入退院を繰り返していた。マネジャーを35年以上務めた小林明子さんによると、最後は9月19日に入院。同29日に病院から危篤の連絡が入り、小林さんは「私は間に合いませんでしたが、静かに旅立ったようです」と話した。

 2012年から認知症を患い、16年から老人介護施設で生活。食べることが大好きでスタッフが「ご飯ですよ」と声をかけると笑顔を見せていたという。「施設の部屋ではテレビで子供番組を流してもらっていました。音楽や声が刺激になっていたようです」(小林さん)と穏やかな日々を過ごしていた。

 高校1年時に母を亡くしたことを機に「手に職をつけなくては」と決意。54年に俳優座養成所に入り、56年にNHK「この瞳」で女優デビュー。海外作品の「名犬ラッシー」(57年)の吹き替えで声優デビューし「ハリスの旋風」「のらくろ」などのアニメで主人公の男の子役を務めた。「サザエさん」では初代の磯野カツオ役を演じた。

 79年に「ドラえもん」のドラえもん役に起用され、愛嬌のあるだみ声で子供たちの心を捉えた。当初は自信がなかったが、原作者の藤子・F・不二雄さんが「ドラえもんって、こういう声だったんですね」と言うほどのハマり役に。「未来から来た子守用猫型ロボット」という設定を大切にし「悪い言葉はインプットされていないはず」と言葉遣いにこだわった。おなじみの「ぼく、ドラえもん」のセリフは台本になかったが「自己紹介が必要」と考え自ら提案したという。05年までの約26年間、ドラえもんの声を務めた。

 01年には直腸がんを患い長期入院したが、機材を病院に持ち込み仕事を全う。ドラえもんが国民的アニメとなり、声の仕事依頼が殺到したが「(ドラえもんと)一緒に仕事している間は他の声の仕事はしたくない」と“一筋”を貫いた。勇退した背景にも「出演中に病気や死が訪れたら、ドラえもんに傷がつく。視聴者の子供たちもがっかりしてしまう」という愛情があった。

 私生活では舞台「孫悟空」(63年)で共演した俳優の砂川啓介さんと64年に結婚。おしどり夫婦で知られ、番組共演なども多かった。大山さんは08年に脳梗塞と心筋梗塞を患い、12年に認知症と診断された。これを15年に砂川さんが公表。砂川さんは懸命に妻を支えたが、17年にがんのため80歳で亡くなった。以降は、小林さんが定期的に大山さんの元に足を運んでいた。

 同時期に野比のび太の声を務めた小原乃梨子さんも今年7月に亡くなったばかりだった。相次ぐ訃報に悲しみが広がっている。

 大山 のぶ代(おおやま・のぶよ、本名山下羨代=やました・のぶよ)1933年(昭8)10月16日生まれ、東京都出身。高校在学中に俳優座養成所に入所。60年にNHKで放送された人形劇「ブーフーウー」のブー役を演じたのをきっかけに声の仕事のオファーが舞い込むようになった。05年に放送業界で働く女性を対象として「放送ウーマン賞」を受賞。06年には自伝「ぼく、ドラえもんでした。」を出版、翌07年には音響専門学校の校長に就任した。

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