巨人・ヘルナンデスのスマートフォンにはある写真が保存されていた。スペイン語で「苦しい時から立ち上がった人が、苦しんだことない人より大きくなるんだ!」と書かれたメッセージを自ら撮影したもの。左手首を骨折し2カ月のリハビリ期間中に何度も奮い立たせてくれた、ファンからの激励の言葉だった。
5月に加入し、交流戦から合流すると8試合連続安打をマークするなど、低調だった打線を活性化させた。阿部監督が「野球に対する姿勢がすばらしい」と評するほど練習熱心。明るい性格でナインとすぐにうちとけ、「エリー」の愛称でファンからも愛された。
チームに欠かせぬ存在となっていたが、8月11日の中日戦の守備で負傷。早期復帰を願い、同20日から東京ドームでの広島、中日との6連戦で、応援メッセージを募る企画「みんな、待っているぞ!エリー」が開催された。日本語で書かれたメッセージも通訳に訳してもらいながら読んだ助っ人が、スマホに保存したひとつが冒頭の言葉だった。
自身のSNSにも多くのメッセージが届いた。出身のドミニカ共和国の公用語のスペイン語だけでなく、英語や日本語でも送られてきた。「言葉の壁があったけれど、日本語は自分で翻訳機を使って、できる限り読んだよ」。込められた意味をちゃんと理解したかった。温かい言葉全てが力になった。
今月17日に実戦復帰を果たし、DeNAとのCSファイナルステージで3連敗し崖っ縁に立ったチームを救うべく19日に緊急昇格。割れんばかりの「エリー」コールで迎えてくれたファンに「本当に支えになった。100%のプレーをして恩返ししたい」と誓っていたが、3戦11打数無安打。チームも逆王手をかけるも第6戦で敗れ、日本シリーズ進出を逃した。
「本当に悔しい。すばらしい環境で一年間できたのは、かけがえのない財産。(来季は)自分でコントロールできない部分もあるけれど、来年も優勝して日本一を達成できるように頑張りたい」とヘルナンデス。ファンは東京ドームで待っている。(記者コラム・青森 正宣)