広島・矢野雅哉内野手(25)が徹底した打力強化で実質“2年目”のジンクス打破を誓った。自慢の堅守を武器に4年目の今季台頭し、キャリアハイをマークした正遊撃手候補。参加中の秋季練習では「力まず、強い打球を打つ」をテーマに、連日バットを振り込む。「2年目が大事なので」。不動のレギュラーへ、努力家に慢心は一切ない。
流す汗の量は尋常じゃない。居残り特打は当たり前。矢野は、マツダスタジアムでの秋季練習でバットを徹底して振り込む。目的は明白だった。
「打撃を、もっともっと上げないといけない。そこをもう一回、見直さないといけないと思っています」
今季は137試合に出場。規定打席に初到達し、打率・260、2本塁打、38打点、13盗塁をマークした。いずれもキャリアハイ。定評のある堅守はもちろん、課題とされた打撃でも幾度となく勝利に貢献してみせた。それでも現状に甘んじるつもりは毛頭ない。
「意識するのは、変な力を入れずに強い打球を打つこと。(バットの)ヘッドが勝手に体に巻き付いてくれたら…ぐらいの感じで」
その裏には、冷静な自己分析があった。スイングで力んでしまうと「ミスショットになってファウルになったり、捉えても内野の間を抜けなかった打球が多かった」。そこが改善できれば、今季放った112本の安打から上積みが見込める。
「(今季は)いい経験をさせてもらったことが、自分の中では大きかった。そこが一番かなと思います」
投手なら規定投球回数、野手の場合は規定打席を、それぞれ3年連続でクリアすれば一人前と言われるプロの世界。レギュラーという表現を安易に使われるが、現状は有力な候補であって、不動の…とはまだ言えない。矢野は百も承知だ。
「2年目が大事。その経験を来年につなげないといけない。あとは自分次第です」
いまだ記憶に鮮烈な9月22日の中日戦。矢野は1点を追う6回1死から粘りに粘り、涌井に1打席22球を投げさせるプロ野球新記録をつくった。
「狙い球に自信を持って(早いカウントから)打ちにいければいいけど、それができない状況もある。その時は自分を殺してでも、打線の中で大事になってくるので。それが自分の生きていくスタイルでもあるので」
5年目の来季。経験が打席での狙い球をより明確にし、かつ力みのないスイングで強い打球の安打を量産すれば、持ち前の粘る技術と相まってレギュラーの座はグッと近づく。不動の遊撃手へ。堅守を誇る矢野は今日もバットを必死に振る。(江尾 卓也)