◇ワールドシリーズ第3戦 ドジャース4ー2ヤンキース (2024年10月28日 ニューヨーク)
左肩亜脱臼の一塁走者・大谷に全力疾走をさせなかった。初回1死。ドジャースの3番フリーマンが会心の一撃で敵地ニューヨークを沈黙させた。カウント1―2に追い込まれても、シュミットの内角高め93・3マイル(約150キロ)のカットボールを振り抜く。ヤンキースファンで埋め尽くされた右翼席へ先制2ランを叩き込んだ。
「特にこの球場では先制して観客を静かにさせたいからね。ボールはよく見えているし、失投を見逃していないと思う」
手負いの35歳が恐るべき打棒でチームを引っ張っている。第1戦で延長10回にWS史上初の逆転サヨナラ満塁本塁打。第2戦でも3回にソロを放った。WS初戦からの3戦連発は02年ボンズ(ジャイアンツ)以来史上3人目だ。さらにフリーマンはブレーブス時代の21年の第5、6戦から出場5試合連続本塁打。こちらもWSタイ記録で、記録に並んだことを問われると「6試合連続にできればね」とにやりと笑った。
これだけの活躍を誰が想像しただろう。9月26日パドレス戦の走塁で右足首を捻挫。一時はプレーオフの出場自体が危ぶまれ、いまだ万全ではない。「休みの日に治療を受けて落ち着かせて、その後にスイングの練習ができた」。7回の第4打席では同じ右足首に自打球を当ててもん絶。続くT・ヘルナンデスの中前打で三塁への激走も見せた。
世界一へ、あと1勝。同僚のE・ヘルナンデスが「この活躍で、フレディは今後ロサンゼルスで食事代を払う必要はないだろう」と笑いながら言うように文句なしでMVPの最有力候補だ。「ただ、トロフィーを掲げたい。方法は何でもいい。次の70打席が70三振で無安打でもいいから、重要なのは勝つことだけだ」。静かな口調に闘志がにじむ。チームと自身の栄冠は、もう目前に迫った。(杉浦大介通信員)
≪WSタイ記録≫ド軍・フリーマンがWS通算5試合連続本塁打を放った。17、19年にまたがって記録したアストロズ・スプリンガー(現ブルージェイズ)と並ぶ2人目の最長記録。両者ともに1試合1本ずつをマークしている。2人に次ぐ4試合連続だった78年のレジー・ジャクソン(ヤンキース)は、3試合目だった77年第6戦での3打席連発など、77年第5戦からの4打数連続本塁打を含む4戦6発。ルー・ゲーリッグ(ヤンキース)は、2試合目だった28年第3戦で2本塁打しており4戦5発だった。WS第1戦からの3試合連続本塁打は58年のハンク・バウアー(ヤンキース)、02年のバリー・ボンズ(ジャイアンツ)と並ぶタイ記録。