J1新潟はあす2日、国立競技場でルヴァン杯決勝の名古屋戦を迎える。03年に浦和で優勝を果たした田中達也アシスタントコーチ(41)は、その経験を選手に伝え、いつも通りのプレーを促している。大舞台で力を出し切り、成長のきっかけにしてほしいと期待している。
03年に浦和に初タイトルとなるルヴァン杯(当時はナビスコ杯)優勝をもたらし、MVPとニューヒーロー賞も獲得した田中コーチの言葉だからこそ説得力がある。「決勝は特別だけれど、特別じゃない。リーグ戦も特別。あんなに何万人の前でプレーできるのは確実に“非日常”。それと変わらない」
そう強調するのにも理由がある。浦和が初めて決勝進出した02年は、前夜祭のパーティーなど決勝独特の雰囲気に「選手がのみ込まれた」こともあり、鹿島に0―1で敗れた。その教訓を生かしたのが03年。「普段のリーグ戦と変わらず取り組むことができた」と決勝は鹿島に4―0とリベンジし、田中コーチも1得点した。同じ轍(てつ)を踏まないよう新潟の選手には「普通の試合でいいんだよ」と話している。
選手時代を含めて新潟在籍は12年目。J2降格の憂き目も味わってきた中で「チーム全体でつかんだ決勝のチケット」と、初の栄冠を懸けた戦いを喜ぶ。
ただ、選手には「個人にフォーカスすることを忘れず、どこまでできるかチャレンジしてほしい」と望む。大舞台ではサッカーを楽しむ意識がかすみがちになるが、今後より大きな舞台を目指す上でも「勝ったらどうなるかというのは後からついてくる。それよりドリブルで抜く、ゴールを決めるという自分のプレーをトライしてほしい」と力を込める。
決戦に向けてチームを一つにしていくのもコーチの役割だ。ベンチ入りの20人から外れても「違う方向を見る選手はいない」と心配はしていないが、気持ちをおもんぱかって「シンプルにまた一緒にトレーニングができればいい」と支えていくことも忘れていない。
田中コーチを含め、ルヴァン杯から躍進を遂げた選手は多い。「最高の舞台が用意されているので楽しんでもらいたい」。その一心で選手を送り出す。(西巻 賢介)