◇ルヴァン杯決勝 名古屋3ー3新潟(PK5ー4)(2024年11月2日 国立競技場)
名古屋が3大会ぶり2度目の優勝を果たした。FW永井謙佑(35)の2得点で先行しながら新潟に2度追い付かれる展開。雨中の死闘は延長の末に3―3で終え、PK戦を5―4で制した。今季限りでの退団が決定しているGKミチェル・ランゲラック主将(36)がMVPを獲得。長谷川健太監督(59)は歴代最多3度目の同杯タイトルを手にした。会場には大会史上最多6万2517人が詰めかけた。
降りしきる冷たい雨ですら心地よく感じた。赤いユニホームと黒いジャージーを着た一団が囲んだ中心には、今季限りでの退団が決まっているGKランゲラックがいた。「最高の終わり方だった」。今季途中にドラガン・ストイコビッチ(現セルビア代表監督)を抜く、外国籍選手のクラブ最多となる公式戦285試合出場。名実ともにレジェンドとなった守護神が有終の美を飾った。
死闘だった。2点リードを守り切れず、延長戦で突き放してもまた追い付かれた。迎えたPK戦。「どうセーブするか。その思考で精いっぱいだった」。ゴールの背後にいる名古屋サポーターの声も届かないくらい集中した。そして新潟2人目のキッカー長倉のコースを読み切り、ミスを誘発。「(7月に)オーストラリアに帰ることを発表した時にはJリーグも天皇杯も優勝は厳しかった。だからルヴァン杯はどうしても優勝したい気持ちだった」。キッカーとしては2人目で成功。タイトルへの執念を示し、MVPに輝いた。
順風満帆なシーズンではなかった。リーグ戦は開幕3連敗。6月中旬以降に4連敗を喫するなど苦しんだ。チームとして自信を失いかける時もあった。ただ、逃げることだけはしなかった。「言葉では何もできない。苦しい状況から立ち上がるには行動するしかない」。練習から全力姿勢を見せることで主将の責務を全う。9月以降の復調につなげた。
今季途中から合言葉になっていたのが『ミッチ(ランゲラックの愛称)のために』――。ただ、本人は「少し心地よくなかった」と笑う。「重要なのは誰かのためではなく、全員のために戦うこと。選手やスタッフ、サポーターの方々…いろんな人が関わってくれている。その方のために戦わなければいけない。優勝トロフィーを掲げて恩返しができて良かった」。18年の加入から7年。思い描いた理想的なフィナーレに、最高の笑みがこぼれた。
(飯間 健)