高知・安芸秋季キャンプ中の阪神・藤川球児監督(44)が2日、就任後初の実戦形式となる、3日の紅白戦のオーダーを自ら発表し、佐藤輝明内野手(25)を紅組の2番に据えた。小技よりも長打を重視する狙いで、白組の同打順にも前川右京外野手(21)を入れた。V奪回を狙う25年シーズン。そのオーダーの選択肢の一つとして、攻撃型2番を試す算段だ。
取材中、藤川監督が、ポケットにしまっていた紙をおもむろに広げ始めた。「あすのメンバー表を持ってますよ」。そう言って、きょう3日の紅白戦のオーダーを紅組から順番に読み上げた。嵐のような暴風雨に見舞われた一日の最後にサプライズを隠していた。紅組の「2番・三塁」に、佐藤輝を入れた。
打順の意図を「浅知恵です」とはぐらかした。粘る報道陣に、仕方なくとばかりに「2番の役割は、僅差のゲームが多いので、(犠打や細かい打撃が)すごく大事だけど、今は(可能性を)狭める時期じゃない」と付け加えた。白組の同じ打順にも、強打でならす前川を置いた。日本の伝統的な「つなぎの2番」像を変えたい思惑が、就任後初の実戦形式のオーダーに表れた。藤本総合コーチの「1、2番のところは監督とよく話し合って打順を決めた。攻撃型の2番を試したいというのがあった」という補足も、“球児流の打線革命”を裏付けた。
新たなミッションを与えられた佐藤輝本人もヤル気十分だ。起用意図を理解して「監督が言う僕の2番というのはアメリカっぽい感じですかね。そういうことだと思うので(走者を)進めたりというのは、そこまで考え過ぎなくてもいいかなと思いますね」とノリノリ。新人だった21年から3年連続20本塁打以上を放った打力を貫くだけとばかりに、「どんどん長打を狙っていけたら」と宣言した。
すでに経験がある。矢野監督のもと22年4月に6試合出場。打率・350(20打数7安打)、2本塁打、3打点と持ち味を発揮した。
強打者を2番に置く米国流の「2番最強説」を、虎でも採用するのかどうか。指揮官は「年間にすると、2番と5番、1番と5番では打席数が全然違う」と語り、いい打者をより多く打席に立たせるメリットも口にした。
その一方で、長打で狙い通りに得点を奪えるほど、甘くないことも承知。「野球はゲームを勝つために行うものなので、そこのはざまとで悩むことになるだろうし」と、小技の重要性も痛いほど認識している。コーチ陣と協議して「みんなで探りながら」V奪回へのベストオーダーを見つける方針。ただ、来季開幕オーダー構想に、「2番・佐藤輝」の可能性があることだけは間違いない。(倉世古 洋平)
〇…紅組の佐藤輝に対し、白組は前川が「2番・左翼」で先発する。今季は先発2番7試合で打率・333(27打数9安打)をマーク。つなぎの役割は理解しつつ「今(白組の「2番」/自分の打撃を/)はシーズンオフなので、自分のスイングをしたい」と結果は度外視して挑む。理想とする2番像を「走者一塁で引っ張って一、三塁をつくる。ケース・バイ・ケースで事を起こす」と語る21歳。藤川阪神のオプションを増やすべく、貴重な実戦の場とする。