大谷の世界一への道のりをさまざまな人物や角度から振り返る連載「SHO is the CHAMPION」。第3回はドジャースのナインが語る大谷の素顔だ。その唯一無二の存在感が、グラウンド内外でチームに大きな影響を与えた。(取材・柳原 直之)
移籍1年目の大谷は驚くほど早くチームになじんだ。2月のキャンプ初日に「まずは環境に慣れること、チームメートに慣れることが最優先」と語っていたが、なじむどころか、すぐに中心的な存在に。さらに、シーズンが始まれば圧倒的なパフォーマンスで、グラウンド内外で選手たちの視線を集めるようになった。
特に他人に流されない行動や信念は尊敬された。チャーター機やバスの車内ではナインが爆音で音楽を流しパーティーのような状況になるが、ムードメーカーのE・ヘルナンデスは「翔平は椅子に座って漫画を読んでいるだけ。それが翔平の一番好きなところ。彼には子供っぽいエネルギーがあり、おかげで大きな重圧から解放されることが」と言う。決して冷めているわけではなく、ベッツは「彼には“ワンライナー”(面白いひと言)がある。会話の最後に突然、面白いひと言を言ってくるんだ」と笑う。
影響される選手も増えた。9月中旬からネクストバッターズサークルで滑り止め用スプレーをバットに直接かけるのではなく宙に噴射し、バットのグリップ部分をクルクルとくぐらせるルーティンを開始。「バットが滑らないように」と理由を多く語らなかったが、今季6本塁打の守備職人ロハスは「翔平がやっているならと思い、同じことをやったら3試合目に本塁打が打てた」と笑顔で明かした。
確固たるリーダー不在のチームを最後は言葉で引っ張った。ワールドシリーズ第2戦で左肩を亜脱臼した大谷が負傷直後に携帯電話のグループメッセージでナインへ「僕は大丈夫だ。試合には出るつもりでいる」と送り「前回はベリンジャーの肩が脱臼した。今回は僕の肩が脱臼した。これは世界王者にとって良い兆候」と締めた。20年にベリンジャー(現カブス)が右肩の脱臼を抱えながらド軍の世界一に貢献したことを引き合いに出し、ナインの士気も高める粋なメッセージだった。