◇ルヴァン杯決勝 新潟3―3名古屋(PK4―5)(2024年11月2日 国立)
アルビレックス新潟は名古屋にPK戦の末に敗れ、初のタイトル獲得はならなかった。0―2の後半26分にMF谷口海斗(29)のゴールで1点差。後半終了間際に途中出場のMF小見洋太(22)が自ら獲得したPKを決めて追い付いた。2―3の延長後半6分には小見のゴールで再び同点としたが、PK戦は4―5で一歩及ばなかった。
歓喜の輪をつくる名古屋の選手たちの横で、FW長倉幹樹(25)はダウンコートのフードをかぶったまま号泣した。攻撃的なスタイルを貫き、2度追い付く執念を見せたが、あと一歩届かなかった。PK戦で失敗した長倉は「自分のせいで負けてしまった」と嘆いた。
本領発揮したのは後半。横幅を広く使って押し込む場面が増え、後半26分にMFゴメスのクロスをMF谷口が「うまく入り込んで決め切れた」と頭で合わせた。ゴール裏だけでなくメイン、バックスタンドの多くのエリアもオレンジ色で埋め尽くした新潟サポーターのボルテージはそこで一気に上がった。
クライマックスは後半アディショナルタイムに訪れた。ペナルティーエリア内で小見が倒され、VAR判定でPKに。「プレッシャーは感じたが(ゴール裏に)サポーターの方がいたので自分らしいキックができた」と、細かくステップを踏む独特の助走から右に決めて同点。延長戦に突入した。
延長戦も先に失点したが、同後半6分に小見が「1点目があったからこそ、GKが見えていて落ち着いて蹴り込めた」と同点弾。しかしPK戦は2人目の長倉の右を狙ったシュートが外れ、名古屋は5人全員が決めた。
20年からボールを保持するスタイルを築き上げ、松橋監督が就任した22年にJ2優勝。J1に再昇格して2年目で“てっぺん”という目標を掲げ、実際に頂点に手をかける位置まで来た。「正直、2年前にJ2で戦っていた時は、このスピードでこの舞台に立てるのは想像していなかった」とDF堀米主将。先制点はビルドアップのミスから許したが、それでも自陣ゴール前からパスで相手のプレスを剥がし続けスタイルを貫いたからこそPK戦まで持ち込んだ。
攻撃的なサッカーを展開し、打ったシュートは22本と名古屋の10本を大きく上回っただけに悔しさは募る。「この経験がいい方向に向かうように頑張りたい」と長倉。さらなる高みに照準を合わせ、成長の糧とする。 (西巻 賢介)