将棋の菅井竜也八段(32)が3日、兵庫県姫路市の世界遺産・姫路城で豊島将之九段(34)と人生初の人間将棋に臨んだ。
姫路城での人間将棋はコロナ禍を挟んで5年ぶり。三の丸広場で駒役を務めた地元中学生40人と出演し、初手▲5八飛。先手から得意の中飛車を選択し、結果は敗れたが「こんなに多くの方の前で対局できたのはいい経験。素晴らしい天気の中、内容も良かった」と笑顔を見せた。
豊島とは先月、死闘を演じた。名人挑戦権を10人総当たりで争うA級順位戦。後手から三間飛車を選択し、相穴熊へ進めた。結果は177手で豊島の勝利。終局は対局開始から15時間を経過した、翌12日午前1時17分という熱戦だった。人間将棋は公式戦とは違い、両対局者がマイクで会話しながら指す。「順位戦(での勝利)、おめでとう」と菅井がジャブを放つ場面もあった。
人間将棋には「全ての駒を動かす」という鉄の掟がある。人が扮した全ての駒に活躍の場を、という意図からで、対局開始前に菅井から「お互いに協力してやれたらと思いますよ」と提案した。
終局まで動かない可能性がある駒としては1、9筋の歩や香、他に桂があり、相手の指し手に乗るからこそ動かせるケースもある。対局中、「(将棋用語の)“端歩のあいさつ、こんにちは”ですよね、あいさつしてよ」と豊島へ要請すると、豊島がその端歩ではなく、王を動かして会場から笑いが起こるやりとりで楽しませた。
菅井は藤井聡太王将(22)=7冠=への挑戦権を争うALSOK杯第74期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)の挑戦者決定リーグに参戦中。1日の佐々木勇気八段戦に勝利し、総勢7人が6局ずつ指すリーグを2勝2敗とした。
残る2局は近藤誠也七段(28)と広瀬章人九段(37)。特に近藤は現在3勝1敗で、西田拓也五段(32)とトップを走る。前期挑戦者で順位1位の菅井は全6局を終えて同率首位が複数出た場合、順位がものを言って上位2人によるプレーオフへ進める有利な立場にある。藤井への連続挑戦のチャンスを残すだけに動向から目を離せない。