◇全日本大学駅伝(2024年11月3日 熱田神宮~伊勢神宮の8区間106・8キロ)
国学院大が5時間9分56秒で初優勝を飾り、10月の出雲駅伝との2冠を達成した。5区の野中恒亨(2年)が区間賞、6区の山本歩夢(4年)が区間新の活躍で青学大との首位争いに持ち込み、2位で受けた最終8区の上原琉翔(3年)が逆転した。7区を走った初マラソン日本記録保持者の絶対エース・平林清澄(4年)だけに頼らない、分厚い選手層を見せつけた。来年1月2、3日の箱根駅伝で、史上6校目となる学生駅伝3冠に挑む。
国学院がアンカー対決でまた勝った。上原がトップでフィニッシュ。4秒差で追った青学大を10キロ手前で抜き去り、伊勢路を初攻略。出雲のアンカー・平林に続く大役を果たした上原は「しっかりゴールテープを切れて、うれしいよりホッとした」と話した。
総合力が際立った。後半の勝負区間へ、「つなぎ区間」の5区・野中、6区・山本が区間賞の走りで2位に浮上し、青学大との一騎打ちを演出。エースの集う7区の平林は2位のまま、逆転ならずも多士済々のメンバーが役割を貫徹。6区区間新記録でMVPを獲得した山本は「全員で勝ち取った日本一」と胸を張った。
1月に新チームが発足し、掲げたテーマは「勝ちきる」。新主将の平林は2月に大阪マラソン初出場制覇を成し遂げ、その言葉を体現した。その後、全員で「平林だけのチームと言われないように、平林を倒すくらいの気持ちでやろう」と思いを共有した。上原は、寮の風呂場や学年の垣根を取っ払った自由席の食事会場で「平林さん、ぶっ倒しますよ」と宣言。平林は「俺、そんな弱くないよ」と言いながら練習で平然と勝ちきる。この雰囲気が好循環を生み、底上げにつながった。
出雲、全日本を制し、次は箱根が待つ。前田康弘監督(46)は「(青学大、駒大の)2校だけが勝ってるようじゃつまらない。大学駅伝界の勢力図を塗り替えるのがミッション」と言った。史上6校目の3冠へ、機は熟した。(大和 弘明)
≪平林悔し涙がうれし涙に≫2位で受けた7区の平林はトップで渡せず。一時は青学大・太田を捉えて逆転も、ラストスパートで屈した。区間2位の好走も勝利を決定づけられず「監督、申し訳ない」と前田監督に泣きながら電話。バス移動中に優勝を知ると、うれし涙を流したという。「駅伝のレースには勝ったが、自分の中の勝負には負けた。箱根まで改善点は優勝した中でも見つけられる」と語った。