秋の行楽シーズンを迎え、登山を楽しむ人が増えている。一方、近年は半袖短パンで富士山に登り、途中で下山できないなどのトラブルが多発。この現状を受け、スーツ姿で登山に挑戦する動画が話題の「オーダースーツSADA」の佐田展隆社長(50)は「無謀な突撃とチャレンジスピリットあふれる行為との差は大きい」と注意喚起した。
佐田氏はオーダースーツ販売会社の4代目。自社スーツの耐久性や運動性PRのため、2013年からYouTubeに動画を投稿。8月には標高5895メートルのアフリカ大陸最高峰・キリマンジャロ登頂に成功した。
「山は危険な場所」と律し、細心の注意を払う。キリマンジャロ挑戦前には2000~3000メートル級の山で体を高度に慣れさせ、氷点下10度にもなる頂上付近では、上下ともにインナーを2枚重ね着。アウターで温度調節できるよう防寒対策を徹底している。実は十分なほどの備えをして挑んでいるのだ。
天候の急変や思わぬケガ、体調不良で最悪命にも関わる。6月には閉山中の富士山で遭難が相次ぎ、死者も出た。山開き後は山梨側登山道「吉田ルート」に入山規制ゲートが設置され、通行料の支払いが義務化。万が一を考慮しない軽装、弾丸登山への警告も行われ、対応に追われたケースがある。佐田氏は「遭難した場合には救助費用などを本人に請求すれば、容易に無謀なことをする人も減るのでは」と語った。
今後も山への畏怖の念を持ち、自身は高みを目指す。「5年以内にエベレストへ。事前準備をしっかりして臨みたい」と力を込めた。 (小田切 葉月)
《スキーやサーフィン…スーツ挑戦まだまだ》
浅黒く焼けた肌が印象的な佐田氏。これまでスーツで富士山、北岳~間ノ岳~槍ヶ岳~奥穂高岳の縦走など、日本百名山に名を連ねるさまざまな山を登ってきた。“世界進出”し、マレーシアのキナバル山や西ヨーロッパ最高峰・モンブランも登頂。登山以外にもスキージャンプやサーフィン、ダイビングにも挑み、スーツで東京マラソンも走った。「スキージャンプでは盛大に転んで体中アザだらけになりましたが、スーツは無事。いいPRになったと思います」と笑った。