Infoseek 楽天

ライセンス復活のアマ13冠・堤駿斗 井岡一翔らの勇姿目に焼き付け「ゼロからスタートする」

スポニチアネックス 2024年11月5日 8時1分

 プロボクシング前東洋太平洋フェザー級王者で、WBA世界スーパーフェザー級8位の堤駿斗(25=志成/5戦5勝2KO)が、心身ともに生まれ変わった姿でリングで恩返しすることを誓った。10月16日付けで、6カ月のボクサーライセンス停止処分が明け、リング復帰が可能となった。「自分はあれだけのことをやってしまった。半年の処分でいいのかな、という気持ちはまだある。ただ、またゼロからスタートする気持ちで、やっていくだけです」。

 世界ユース選手権を日本人で初めて制したアマチュア13冠のホープは、思わぬ形でプロの壁に直面した。今年4月16日、元世界バンタム級王者のアンセルモ・モレノ(パナマ)とのフェザー級ノンタイトル10回戦(17日・後楽園ホール)の前日計量で1・6キロの体重超過。再計量でもクリアできず、日本ボクシングコミッション(JBC)から6カ月のライセンス停止処分が下された。当日計量をパスした堤は、実施された試合で3回2分46秒KO勝ちも笑顔はなく、試合後は謝罪を繰り返した。減量期間にコロナウイルスに感染し、十分な調整ができなかった不運も重なった。

 「計量失敗後、最初の2カ月はボクシングのことを考えられず、ずっと気分も落ちて練習どころではなかった。朝起きて軽くジョギングをしたら、後は家でYouTubeを見たりする生活。超つまらなかったし、俺なにやっているんだろう、と何度もむなしい気持ちになりました」。

 そんなどん底の堤を救ったのは、先輩たちの勇姿だった。同ジム所属の元4階級制覇王者で前WBA世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(35=志成)が7月7日に東京・両国国技館でIBF同級王者フェルナンド・マルティネス(33=アルゼンチン)と2団体王座統一戦で激突。0―3の判定で敗れ、王座統一に失敗したが、大先輩の姿に心を打たれた。「試合には負けてしまったが、どんなに強いパンチをもらっても前に出て攻め続けて、最後まで下がらずに立ち向かっていた」。普段から黙々と練習に打ち込むひたむきな姿勢に「自分より10歳年上の方が、いまだに挑戦する姿を感じた。10歳も若い自分がいつまでもだらしない生活をしていられない気持ちになった」と再出発することを誓った。

 元WBC世界フライ級王者の比嘉大吾(28)も、9月3日にWBO世界バンタム級タイトルマッチで王者・武居由樹(28=大橋)と対戦。僅差判定で敗れたが、約6年5カ月ぶりの世界戦で名勝負を演じた。試合前の長野合宿に帯同し、当日もサポートメンバーとしてリングサイドから見守った堤は「不利予想の中、あれだけ善戦されてダウンも奪った。合宿でも、今まで見たことのない大吾さんの真剣さが伝わってきたし、たくさん刺激をもらいました」。ライセンス停止期間は苦しい時間も過ごしたが、ボクシングへの情熱や周囲の存在の大きさを再認識した有意義なものとなった。

 10月19日には米ラスベガスでのスパーリング合宿のため渡米。一階級上のスーパーフェザー級への転向も見据えながら、未定の次戦へ本格的な実戦練習を再開している。「しばらくはリングに立ちたくないと思うこともあったが、先輩方が頑張る姿を見ていろいろな思いがこみ上げてきた。見ている方々に楽しんでもらえるボクサーになることを目指して、一つずつ目の前の課題を着実にクリアしていきたい」。またリングに立つ日々を夢見て、未完の大器が再出発を図る。(伊東 慶久)

この記事の関連ニュース