「漂流教室」「まことちゃん」などで独自の作風を築いた漫画家の楳図かずお(本名・楳図一雄=うめず・かずお)さんが10月28日、死去した。88歳。胃がんを患っていたといい、施設で療養中だった。漫画、芸術界の巨匠の訃報に、業界から悲しみの声が広がっている。
楳図さんは1936年9月生まれ、和歌山県出身。1955年に貸本漫画家として活動を始め、「週刊少年サンデー」などに作品を発表。55年に「森の兄妹」でプロ漫画家デビューを果たした。代表作は「漂流教室」「まことちゃん」など。ホラー、SF、ギャグと幅広い分野で漫画文化へ貢献した。
「ホラー漫画の第一人者」として数々の賞を受賞し、映画・ドラマ化・舞台化など時代を超えて愛された作品を生み出した楳図さん。「富江」シリーズで知られるホラー漫画家・伊藤潤二氏は訃報を受け「楳図かずお先生がお亡くなりになったというニュースに接しました。以前、まことちゃんハウスで対談させていただいた後に、吉祥寺のイタリアンレストランでご馳走になったことが人生最大の思い出です」と回顧し、「心からご冥福をお祈りいたします」と追悼した。
浮世絵の制作技術を継承する木版画工房「アダチ版画研究所」は「楳図かずお先生のご冥福をお祈りします。写楽の役者絵を彷彿とさせる雲母摺の大首絵、北斎の赤富士の引用、広重作品の飾り枠の採用など、制作させていただいた木版画からは、浮世絵に対する造詣の深さを感じました」と結んだ。
漫画家の井上純一氏は「楳図かずお先生というと“天才”しか連想されない。ほぼデビュー作、高校二年で描いた漫画は“各シーンに自作の効果音の音符を描き込む”いう天才ぶり。“漫画から音が出ないかなあ”と思っても、凡人はここには至らない。しかもこの画力、そして高校生」と、その功績を称えた。