【Road To 甲子園ボウル】これ以上の「最終節」とは、なかなか巡り合えない。関西1部リーグの3位まで、全日本大学選手権への門戸が開放されたシーズン元年。61度目の優勝を決めた関学大が最初の1枠を確定させ、残る2枠を1敗の立命大、2敗の関大、近大、そして3敗の神戸大までが争う。ともに今季初勝利を懸けた桃山学院大―阪大戦を含め、消化試合は存在しない。
歓迎すべきカオスを演出したのは近大だった。第2節で関大に逆転勝利。昨年優勝を分け合った「3強」がそのまま全国へ進む「予定調和」に、くさびを打った。
長年、中位に甘んじたチームの風景は、古橋由一郎ヘッドコーチ(HC)、そして平本恵也QBコーチによって変えられた。特に00年代の立命大黄金時代を築いた古橋HCは意識改革から着手。強豪校なら当たり前に存在する準備の重要性を訴えるところから始めた。「選手によっては、まだまだ(意識が)低い」と道半ばを強調しつつ、同HCは熱く呼びかける。
「(最終節の)神戸に負けても勝っても、どっちでもええわ、というチームではない。もう一段、上のチームをつくっているのだから負けられない。プライドを持て、と」
近大が神戸大を下して2敗を守ると、直接対決で敗れた関大は一気に追いつめられる。京大戦の勝利はもちろん、翌10日に立命大が勝てば、シーズン終了。昨年のミルズ杯QB須田啓太主将は甲子園に立てないまま、学生フットボール生活の幕を下ろす。
「自力で何とかなる状況じゃなくても、ちゃんと準備しなければ運も巡ってこない。最後まで前を向いてやる」
背番号8の悲壮な決意が言葉ににじんだ。近大、関大が勝った場合、立命大に大きなプレッシャーがかかる。関学大戦を落とせば、3校による抽選。1年前の「悪夢」が頭をよぎる。近大、関大がともに黒星で3敗になった時、同じ星勘定の神戸大と3校抽選の可能性も残している。
「最後は本当に死ぬ気で、目の色を変えてやらないといけない」
立命大RB山崎大央主将はシンプルなひと言でラストゲームに臨む思いを表した。全日本選手権のシステム変更がもたらしたサバイバル。最後のフィールドへ向かう選手に、全国を見据える余裕はない。 (堀田 和昭)