テレビ朝日バラエティー「森香澄の全部嘘テレビ」(水曜深夜2・34)が独特の読後感を生む番組として話題だ。
初の冠番組を持つことになったタレントの森香澄(29)がさまざまな企画に体を張って挑戦する。タイトル通り「全部嘘」のはずが、「森香澄なら本当かも…」と思わせるような展開が視聴者を引きつけている。6月のトライアル放送4回を経て、10月にレギュラー番組に昇格。演出の細田翔太郎氏が番組誕生の経緯や番組の知られざる狙いを明かした。
企画のきっかけはネットで「嘘ツアー」を目にしたこと。今年3月に行われた浅草を「すべて嘘」のガイドで回るツアーが大盛り上がりで、実施前からもSNSなどで話題となっていた。細田氏は「“うそでこんなに人が集まるんだ”ってインプットがあって、それならもう全部うそのテレビ企画をやっても人気になるんじゃないか」と頭に浮かんだ。「“全部嘘”がパワーワードだなと。逆に気になると僕自身が思いました」。
このアイデアに森を掛け合わせた理由は「単純にファンだったから」と告白。だが、「(深夜枠の)バラバラ大作戦って演者さんを相当好きじゃないとできないのかなって。タッグを組んで熱量を持って“この人のために頑張ろう”って思えないと僕は頑張れないと思ったんです」と確固たる意志がそこにはあった。
森の出演者としての魅力は、テレビ局でアナウンサーをしていたことから制作意図の飲み込みが早く、1を聞いたら10を理解するところだという。そして「なにより、良い意味でも悪い意味でも賛否両論を生むこと」と強調した。
「多くのファンもいるが、必ず“裏に何かありそう”と臆測を呼ぶ。それがこの番組に合うんです。賛否両方あってこそ成り立って盛り上がる番組だと思っています」と話し、森のキャラクターが番組にピッタリはまった。レギュラー放送の初回では、森が野球場でビールの売り子になっていたが「実は本当にやってそう」と真実味を帯びさせる存在感も「唯一無二」と表現した。
「本当にやりたいことがあるんです」と細田氏には大きな目標がひとつある。「世の中で誰もがうっすら思ってる皮肉や矛盾を企画にして、ギャラクシー賞を取りたいんです」と野望を明かした。
例えば、6月のトライアル放送時に森が居酒屋で恋愛や結婚についてトークをした回。“森香澄が途中から、ディープフェイクで違う人物に変わってた”という内容だった。「技術発達が進むことで、話し手がフェイク映像で変わっても誰も気付かなくなるのかな、最先端技術に頼るとこういう世の中になっちゃうのかな、といった問題提起をしてみたい思いがありました」と深い狙いがあったことを明かした。
「“この番組は森香澄にエロいことさせてて…”なんて言われたりもしますが」と笑いつつ、「根幹は森さんというフィルターを通して、皆さんが世の中に対してちょっと思ったり感じていることを発信できたら」と言葉に力を込めた。
「本当に全部うそなら見なくていいという意見もあるのはもっともです」とした上で、「だからこそ、森さんなら本当かも、と思ってもらえるように丁寧に作っています」と自信を持って番組作りをしている。加えて「それだけだとロケの場合は密着バラエティーになってしまうので、グラデーションのように“うそかな?本当かな?”と考えてしまうようなボケを織り交ぜます」と明かし、虚実の絶妙なバランスを保つことを意識している。
「ありえそう」と思わせる森の存在感がある故に、視聴者が混乱してしまうのも番組の一つの特徴。細田氏は「本当だと思って視聴していただきたい」という狙いがあるだけに、視聴者が感じている「どこまでが本当で、どれがうそ?」といった戸惑いには、「素直にうれしい」と手応え十分といった様子の笑顔を見せた。
今後、森がどのような企画に挑戦し、そこにはどのようなメッセージが込められているのか――。「森香澄の全部嘘テレビ」の“うそ”から目が離せない。