俳優のファーストサマーウイカ(34)が、NHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8:00)にききょう(清少納言)役で出演。負けん気の強い女性が、亡き皇后・藤原定子(高畑充希)への大きな愛情ゆえに憎悪や無力感にむしばまれていく姿を圧巻の表現力で演じている。ウイカにききょうの心境の変化について聞いた。
<※以下、ネタバレ有>
「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」などを生んだ“ラブストーリーの名手”大石氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高由里子は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となる。
ききょうは才能と自信にあふれた明るい女性。主人公のまひろと対照的な「陽キャ」として視聴者に愛されていた。しかし、定子という「光」を失ってから変貌していく。ウイカは「ききょうにとっての“光る君”は定子さま。闇堕ちしたというより、光がなくなって闇に包まれてもがき苦しんだ」と説明した。
「道長が左大臣としてぶん回していた頃は、すごろくで出る目出る目が全部マイナス。身内に不幸が降りかかるようなマスしか出ない」。親友だったまひろによる「源氏物語」執筆、定子の兄・伊周(三浦翔平)の死と、次々に不幸な出来事が降りかかる。
決定打となったのが、道長が定子の長男・敦康親王(片岡千之助)ではなく、彰子の長男・敦成親王を東宮にしたこと。ウイカは政治に翻弄(ほんろう)される定子の子供たちについて、「達観していることがやるせなくて悲しい。健やかに育つことをお手伝いすることしかききょうにはできない。悲しみと苦しみを原動力に最後まで奮闘しました」と吐露した。
「最後の奮闘」というのが、第41話「揺らぎ」(10月27日放送)。ききょうは和歌の会に乱入し、毒を吐いて去っていく。ウイカはこのシーンを「カチコミ」と表現。「一番しんどかったです。誰も幸せじゃない時間。あんなに機知に富んだ人でも、余裕がなくなるとこうなるのかと悲しかった」と本音をこぼし、「ききょうは本来あんな無鉄砲な人ではない。闇から抜け出そうと必死だった。その様は外から見ると、悲しくも痛々しくも感じたりする」と声を絞り出した。
一転、第43話「輝きののちに」(11月10日放送)では、憑きものが取れたような表情で、「恨みを持つことで、己の命を支えて参りましたが、もうそれはやめようと思います」と口にする。ウイカはききょうの心境の変化について、「天命だと諦めた、あるいは限界を感じ引退を決めた、そんな心情だった」と明かした。道長への恨みは突然消え去った。「台本には書かれていない空白の時間ですが、私は消え去ったとは思いません。ただ、牙がポロっと抜けたような…呪いから解放されたのかなと解釈して演じました」と語った。