【目指せ!イチロー&由伸 24年ドラフト下位指名】 日本一のチームに東都No・1投手が加わる。DeNAから6位指名を受けた国学院大の坂口翔颯(かすが)投手(4年)は、最速153キロの直球に多彩な変化球も操る本格派右腕。ケガからも完全復帰を果たし、満を持してプロの世界へ飛び込む。
10月23日。リーグ最終戦だった東農大戦で、6点リードの9回のマウンドを託された坂口は涙をこらえるのに必死だった。貫禄十分に無失点に封じて勝利を決めると、ともに戦ってきた仲間と抱き合いながら涙した。翌日のドラフト会議で、夢の指名を受け「プロは小さい時から憧れていた場所なのでうれしい」と笑顔がはじけた。
これまでの野球人生で一番の苦しみに耐えた。春季リーグ終盤で痛めた右肘の影響で、今秋は開幕に間に合わなかった。進路をプロ一本に絞ったがアピールすることができず「今までやってきたことに自信はあるが、でももし指名漏れをしたらどうしようと思う時もある」と不安を口にしたことも。だが、10月9日にようやく復活登板を果たし、今秋は4試合全てで救援登板して計6回2/3を1失点。1年春から立ち続けてきた神宮のマウンドで最後はエースとしての存在感を示し、最終登板後は「うれしいこともつらいこともたくさんの経験をしたマウンド。やっぱり寂しさはありますね」と涙した。
今季はケガ明けということもあり先発登板は0だが、本来は先発完投型。1年春のデビューから“戦国東都”で積み重ねてきた勝利数は11となった。1年秋には最優秀投手賞を獲得するなど実績十分。この1年こそわずか1勝に終わったが「厳しい東都リーグでの経験が自分を成長させてくれた。どれもいい思い出です」と4年間を振り返った。
飛び込む先はセ・リーグ3位から26年ぶりの日本一まで成り上がったDeNA。将来は先発の柱としての期待も大きく「1年目から1軍で投げて、将来は2桁勝てるピッチャーになりたい」。神宮から横浜へと主戦場を移し、さらなる輝きを放つ。(村井 樹)
《憧れ続けた甲子園 投げる日が待ち遠しい》
【記者フリートーク】 あのマウンドに立つ姿が楽しみで仕方がない。ドラフト前、坂口が「いつかは立ってみたい」と語っていたのが、甲子園のマウンドだ。
報徳学園1年時の夏にチームが甲子園出場を決めると、坂口はボールボーイに指名された。試合開始前にはロジンをマウンドに持っていく役目を任され「マウンドの雰囲気を味わった」と、グラウンドで一番高い場所に少しだけ立ち止まった。「次はこのマウンドに立つ」という決意を胸にしたが、高3時は新型コロナの影響で甲子園大会が中止となり、目指すことすらできなかった。
出身は兵庫県。近くて遠い場所だったが、今後は敵として戦う阪神の本拠地となる。憧れ続けた場所に立つ日はそう遠くないはずだ。(アマチュア野球担当・村井 樹)
《10・17日大戦3回1失点 511日ぶり感謝の白星》 今秋の10月17日の日大戦で挙げた1勝は、昨春の5月25日以来511日ぶりの白星だった。リードした展開だったが先発・当山が4回1/3で降板し、3番手で登板した坂口が3回1失点に封じた。試合後に1年ぶりの勝利を知ると「そうだったんですか。みんながつないでくれた結果ですね」と笑った。見守ってきた鳥山泰孝監督も「うれしいね。それにしても長かったな」とエースの肩に手をやりながら喜んでいた。
◇坂口 翔颯(さかぐち・かすが)2002年(平14)9月12日生まれ、兵庫県出身の22歳。昆陽里小1年から野球を始める。報徳学園(兵庫)では1年春に初めてベンチ入りし、国学院大では1年春にリーグ戦デビュー。憧れの選手は中日・柳。1メートル80、80キロ。右投げ右打ち。