ドジャースの大谷翔平投手(30)が、野球が追加競技として復活する28年ロサンゼルス五輪へのトップメジャーリーガーの出場について、今オフの間に大リーグ選手会のトニー・クラーク専務理事(52)と直接会談することが11日(日本時間12日)までに分かった。参加にはシーズン中断など多くの障壁が残る中、「メジャーの顔」の意見を選手会トップは尊重していく構えだ。
野球が2大会ぶりに実施される28年ロス五輪まであと4年。最大の焦点は史上初めてトップメジャーリーガーが出場するのか、否かだ。ワールドシリーズを視察した大リーグ選手会のクラーク専務理事は、大谷ら複数のスター選手と今オフ中に面談するプランを明かし「翔平に連絡を取る。他の選手と同様に翔平の意見も重要視している」と説明した。
選手会トップの専務理事が、直々に一選手を指名することは異例。今や「メジャーの顔」とも称される大谷の影響力は大きく、野球の国際化、人気復活を目指す大リーグ機構(MLB)の目的と合致する。大谷はオールスター戦前日の7月15日の会見で「五輪は特別。出たい気持ちはもちろんある」と出場意思を表明している。
大谷の意思表明には、ヤンキース・ジャッジ、フィリーズ・ハーパーら大物スターも次々と賛同していた。翌16日にMLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーも「話し合う準備はある。オープンな姿勢だ」と態度を軟化させた。タイガース、ヤンキースなどでメジャー通算251本塁打の強打の一塁手として活躍したクラーク専務理事は「既に複数の選手に五輪参加への興味を聞いているが、熱い思いが伝わってきている」と語り、「翔平や他の選手とも腰を据えて話さなければならない」と続けた。
メジャーのベンチ入り26人枠の選手の五輪出場が認められたことはなく、実現にはシーズンの中断が不可欠。そのためには26年オフの労使交渉で協定の変更も必要となる。他にも故障のリスク、莫大(ばくだい)な額に上るであろう保険、チームごとの負担の差など、多くの障壁が存在。同専務理事は「球界全体をサポートする体制を整えなければ。MLBともしっかり話し合う必要がある」とも言った。
野球の会場はドジャースタジアムが有力。4年後は34歳となる大谷は「特に五輪は普段、野球を見ない人たちも見る機会は増えてくる。野球界にとっても大事なこと」と話している。夢の実現へ、機運は着実に高まってきている。(杉浦大介通信員)
≪大谷の意思表示以前はコミッショナー懐疑的≫7月の「大谷発言」以前のマンフレッド・コミッショナーは、昨年10月に「我々は毎日のように試合を行う。シーズンの完全性を重視している」とレギュラーシーズン中断は困難との見解を示した。今年2月には「カレンダーを見ると(五輪は)通常なら球宴が行われる時期に近いのでかなり複雑」と過密日程を理由にメジャーリーガーの出場に懐疑的な見方を示していた。一方で、一部のオーナーは前向きな姿勢だとも報じられていた。