争奪戦のゴングが鳴る――。ソフトバンクの甲斐拓也捕手(32)が今季初取得した国内フリーエージェント(FA)権を行使することが12日、分かった。有資格者が権利行使できる手続き期間最終日となる、13日に球団に対して意思を通知する。あす14日に公示され、15日から他球団との契約交渉が可能。人的または金銭の補償が発生するBランクとみられる。球団は4年総額12億円(推定)の好条件で引き留めに努めるが、巨人も争奪戦に参戦する可能性が高い。
悩みに悩み抜いた末に、決断した。甲斐は「明日(13日)、球団にうかがいます」と、今季取得した国内FA権を行使することを明言した。
覚悟の単年契約を終えた、甲斐なりの決断だった。昨年オフの契約更改交渉で球団から複数年契約の提示を受けながら、単年契約で現状維持となる年俸2億1000万円でサインした。14年目の今季は119試合に出場し、打率・256、5本塁打、43打点。打撃では勝負強さが増し、守りではリーグトップのチーム防御率2・53の投手陣をけん引。4年ぶりの優勝の原動力となり、エース・有原と最優秀バッテリー賞も獲得した。
日本シリーズでDeNAに敗退後、権利の行使について熟考してきた。11日には自主トレのために訪れたみずほペイペイドームで「今はまだちょっと何も言えることはありません。(申請期限の)13日までしっかり考えたい」と話していた。
甲斐は大分・楊志館から2010年の育成ドラフト6位指名で入団し、13年オフに支配下選手登録。強肩、高いブロッキング技術などでゴールデングラブ賞を今季も含めて7度獲得し、21年の東京五輪では金メダル、昨年のWBCでは世界一に貢献した。宣言残留を認める球団は、日本を代表する捕手に成長した生え抜き捕手の引き留めに全力を尽くす。すでに4年総額12億円規模の大型契約を提示。正捕手流出を阻止するため、今後の上方修正も含めて誠意を示していく構えだ。
FA宣言後、15日からは他球団との交渉が解禁となる。FA補強に参戦する見込みの巨人は、今オフの目玉となる甲斐の獲得に向け、本格参戦する可能性は高い。4年ぶりのリーグ優勝を果たした今季は、岸田、小林、大城卓の3捕手を併用して戦い抜いた。核となる選手が加われば、チーム力の底上げになることは間違いない。来季のリーグ連覇、日本一奪回に向けて、ソフトバンクや他球団に負けない大型契約を用意するとみられ、激しい争奪戦が展開されそうだ。(金額は推定)
○…ソフトバンク・甲斐が正式に国内FA権を行使すれば、同じく育成出身で8日に手続きした石川に続いて今オフ2人目となる。ソフトバンクの国内FA宣言は19年オフの福田秀平以来5年ぶり。福田はソフトバンクを含む6球団の争奪戦の末、ロッテに移籍した。また、22年オフには千賀滉大が海外FA権を行使し、大リーグのメッツに移籍している。