【コーチに聞く】オフ恒例の連載「コーチに聞く」。第1回は小谷野栄一打撃チーフコーチ(44)が登場する。藤川球児新監督(44)と同じ1980年生まれの「松坂世代」で、オリックスのリーグ3連覇に貢献した。自身の指導における禁句は「俺らの時代は…」。初めて在籍するセ・リーグで、選手とともに進化を遂げる思いを明かした。
――コーチとして一番大事にしていきたい部分は?
「こういう時はこれをすればいい、という正解は一切ない。技術的なことを含め、日々進化していくものだと思うんですね。だから、そこで自分が凝り固まってしまうと、選手の成長が止まってしまう。一緒になって成長、進化していくようなスタンスでやりたい。選手の能力を考えると、今の子たちは自分たちの時代に比べて全然、凄い。俺らの時代は――という表現をすることが一番失礼。それだけはしないように、気を付けています」
――一緒になって進化する。
「いろいろと変化をもたらそうとした時、人間って欠点に目が行きがちなんですよね。そうではなくて、長所に目を向けることを心がけている。シーズンに入ると、悪い方に目が行きがちになる。その人間の本能的にある部分を疑って、選手のいいところを見たい。僕は選手でもコーチでも、選手ファーストのチームにいた。選手がいかに良くなるかだけを考えて、やっていきたいです。僕自身もチャレンジだと思う。本当にパ・リーグしか知らないので。だから、選手から学ぶことも絶対あると思います」
――秋季キャンプでスイングスピード、すなわち出力を上げることに取り組んでいる。出力を上げれば、直球を1球で打ち返すことにもつながるか。
「キャンプでやっている練習は、真っすぐということではなく、自分の形でワンスイングでしっかり捉えられるように、がテーマ。その後に実戦での応用編がある。今は、いかにシンプルに選手が打席に立ちやすいようにできるか、を提案していかなきゃと思っています」
――藤川監督から練習の要望はあったか?
「こうしてほしいというのは、今のところはないですね。監督は、皆さんも知っている通り、凄く賢い方なのでね。野手でなくても、野手のことを学ぼうとする方。あと、こっちに任せてくれるというか、信じてくれてるので、やりがいもある」
――井坪ら、伸びしろの多い原石を磨いていく楽しさは?
「若い子の成長に携わることが、この仕事で一番魅力があるところ。何かが開いた瞬間に、携わった時はこっちも幸せな気分になる。そういう機会が一つでも多く訪れたらと思っています」
◇小谷野 栄一(こやの・えいいち)1980年(昭55)10月10日生まれ、東京都出身の44歳。創価では3年春に甲子園出場。創価大を経て02年ドラフト5巡目で日本ハム入団。強打の内野手として10年に打点王。14年オフにオリックスへFA移籍し、18年限りで引退。通算成績は1394試合で1260安打、打率・264、71本塁打、566打点。19年は楽天で打撃コーチ。20年からオリックスで野手総合コーチ、打撃コーチなどを歴任。右投げ右打ち。