阪神の秋季キャンプ(高知・安芸)は連日、ほぼ同じ練習メニューで行われている。数人の早出から全体練習に入り、ウオームアップ、走塁、キャッチボール、守備練習、打撃練習、個別練習……と繰り返される。
悪い表現を使えば、毎日、代わり映えしない内容である。選手たちにとっては――いや、実はコーチ陣も――マンネリとの闘いだと言える。
毎日同じメニューをどれほど意識を高くもってできるか。ある種の修行のような日々である。
ただし、一流と言われる選手は地道で途方もない反復練習によって、その地位を築いている。監督・藤川球児も就任後、言葉を換えながら、よく口にしている。
イチロー(当時オリックス)がプロ野球初の200安打を放って世に出た1994年秋、テレビ朝日『ニュースステーション』に出演した際、筆で書いた座右の銘は「継続は力なり」だった。
後に大リーグに渡り、日米通算4000安打を放った際に語った極意も同じ「継続は力なり」だった。「小さなことを重ねることが、とんでもないところに行くただ一つの道」。信念である。初心通り、地道に反復練習を繰り返していたのだ。
前監督の岡田彰布がオーナー付顧問に就任した際(今月6日)に語ったのも、継続と反復練習の重要性だった。「シーズンは長い。継続することよ」と言った。新監督の藤川に向け、選手の見方を示した言葉である。
「だから一喜一憂したらあかん。今日良かった、明日どうやろ、明日あかんのんちゃうかな、とか、そんなんしとったら1年もたんて。こんなもんやろと思って、ずっと過ぎていったらええんよ。いつかめっちゃようなってるわ。それが積み重ね、継続やんか」
示唆に富んでいる。繰り返し行う反復のなか、ある日、「めっちゃようなっている」わけだ。
脳科学者・茂木健一郎が<結果は突然、現れる>と著書『緊張を味方につける脳科学』(河出新書)に書いていた。<日々の鍛錬、練習の成果などで(中略)あるとき「化ける」という事象が生まれます>。それは<神秘の力、科学的に証明できない力というよりは、人間が誰でも発揮できる、地道な努力によって支えられた精神力により、人間は急に化けるのだと私は考えています>。
反復練習、継続については、次回もう少し書いてみたい。 =敬称略= (編集委員)