◇WBSCプレミア12 1次ラウンドB組第4戦 日本7―6キューバ(2024年11月17日 天母)
座り込んだ3秒が、9回のマウンドを任される重圧を表していた。7―6の2死満塁、カウント2―2。侍ジャパンの楽天・藤平は、無心で腕を振った。142キロのフォークにコスメのバットが空を切る。4時間7分の激闘に終止符を打ち、会心のガッツポーズ。その後、ホッとした表情で座り込み、勝利の瞬間をかみしめた。
「絶対ゼロで帰りたいと思っていた。ホッとしたのと、(スイッチが)切れた感じ。凄い良い経験ができた」
守護神・大勢(巨人)が連投中だったため、9回のマウンドを託されることは試合前に聞かされていた。8回に味方が勝ち越して、1点リードでマウンドへ。先頭を遊ゴロに仕留めたものの、連打で一、二塁を背負い、フォークが抜けて死球で満塁に。迎えたのはメジャー通算93発の強打者モンカダ。
「シーズン中も何回もあった。緊張しても意味ないし、仲間を信じて投げました」。開き直って、鬼気迫る表情でモンカダには5球全て直球。この日最速153キロで見逃し三振を奪い、2者連続三振で締めた。
10日チェコ戦での侍デビューから、9者連続三振中だった。この日先頭の遊ゴロで途切れ「まずは途切れて良かったなと。意識しちゃうから」と苦笑い。それでもこれで侍ジャパンで奪った12アウト中、11個が三振。「一つ一つアウトを取れば、という気持ちでやっていける」と切り替えた後も、奪三振ショーは継続していた。
井端監督は「投手に制限がある中だった。今日のところは託していた」と代理クローザーの輝きに目を細めた。「意気に感じて投げられた。大勢は普通にセーブしていて凄い」と国際大会初セーブを挙げた藤平。試合後、キューバのチームバスに間違えて乗りかけた姿が、重圧から解放された背番号46の気持ちを物語っていた。(小野寺 大)