◇大相撲九州場所8日目(2024年11月17日 福岡国際センター)
先場所新入幕の阿武剋が、朝紅龍に良い相撲で勝って1敗をキープしました。彼の良さは左の使い方のうまさにあります。左で間合いを取りながら、胸を合わせるとすぐに前まわしを引きます。そして左を差すと肘を張って相手の右上手を使えなくする。その肘の張り方もうまい。この日のように左が入るともろ差しになって、一気に前に出て勝負を決めることもできます。
稽古場で彼を見る時も、左の使い方に注目しています。相手が嫌がる動きをするだけでなく、自分の力が出る相撲を取っています。私が現役なら当たりたくないタイプです。似た力士を挙げるとすれば“圧力のない日馬富士関”といった感じでしょうか。日馬富士関は、前さばきがうまい上に前に出る圧力がありました。これで阿武剋に圧力が備わってきたら、相手は何もできなくなるでしょう。
後半戦で上と当たるようになれば、台風の目になる可能性もあります。何人か食われてしまうかもしれません。 (元横綱・稀勢の里)