オリックスの高知・秋季キャンプ最終日となった18日、ブルペンには異様な光景が広がった。首脳陣の計らいで、ブルペン捕手の真後ろに招かれたファンが大挙。あるのは防球ネットの隔たりのみで、現地を訪れたオリ党は椋木と東松の球質を間近で見られる機会に恵まれた。
椋木が捕手を立たせた投球練習を始め、スライダーを披露した際には曲がり幅の大きさを体感したファンから「おおっ!」と、どよめきが起こる。その後捕手を座らせた椋木は、10球オール直球で投球練習を実施。投球練習を終え、ブルペン内は盛大な拍手に包まれた。ちょうど捕手の真後ろで固唾(かたず)をのみながら投球を見ていた子どもは、投球練習後の椋木からボールをプレゼントされるサプライズに、より一層、目を輝かせた。
狙いは単なるファンへのサービスだけではない。椋木は「人を気にせず投げないといけない場所で普段は投げるので。(ファンに)横で見るより後ろで見る方が、より良い球がいってるぞと見せたい気持ちで投げました」と振り返る。高卒1年目を終えたばかりの東松にとっても同様だろう。厚沢投手コーチがニヤリと笑った。「最終日に一番いい練習になったんじゃない?(ファンと)ウィンウィンだよ」
岸田新監督からも「トミー・ジョン手術から丸約2年経って、体全体のバランスとタイミングがかみ合ってきている」と秋季キャンプ全体のMVPの一人として評価された椋木は、キャンプ途中からセットポジションでの投球フォームに挑戦。「クイックも自分の中では苦手な感じが無くなって。あの投げ方なら普通に走者なしでもくいいくで投げられるし、レパートリーが増えるなと。来年楽しみだなという感じになっています」と手応えを深めた様子だ。
投球練習終了後、厚沢投手コーチは見学のファンへ「来年の(山本)由伸枠です」と紹介。ブルペンの拍手はさらに大きくなった。「(チームは)左投手にいい投手が多いので。右で同級生の東に負けないように、シーズン投げ切れたら2桁10勝を目指したい」と椋木。ファンと有意義な時間を“共有”する形で、充実の秋季キャンプを締めくくった。 (阪井 日向)