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「覚悟の采配」は巨人とトヨタに通じていた “Vの分岐点”大勢起用法が社会人名門に与えた影響

スポニチアネックス 2024年11月19日 8時3分

 優勝をたぐり寄せるためには、監督に覚悟を求められる瞬間が来る。それはプロ野球でも、高校野球などのアマチュア野球でも変わらない。社会人野球のトヨタ自動車が今月の日本選手権で日本一に輝いた背景には、今季4年ぶりのリーグ優勝を飾った巨人の采配に影響を受けていた。

 藤原航平監督は中大時代、巨人・阿部慎之助監督の1学年下で同僚としてプレーしていた。その阿部監督がかなえた優勝への分岐点を、藤原監督は現地で見ていた。2位の広島にマツダスタジアムで2連勝して迎えた9月12日の一戦である。

 観客がどよめく采配を目の当たりにした。救援陣が3―0の8回2死一、二塁を招いたところで、抑えの大勢を投入したのだ。8回途中からの登板は今季初だった。この起用が功を奏して同一カード3連勝を挙げ、混沌としていた優勝争いから抜け出した。この勝負手に、藤原監督は学びを得た。

 「大勢投手が8回途中から登板したときに、改めてこの試合にかけていることを凄く感じたんですよ。この試合にかける監督の思いは大事なのだなと思った。そして、その思いは、選手にも伝わるのだなと思いました」

 18年12月に就任した藤原監督は、勝利と育成の両立に頭を悩ませてきた。若手の成長を期待するあまり、目先の一勝を落としては元も子もない。だからこそ、優勝争いが佳境に入った最適なタイミングで一手を打ち、選手を鼓舞した阿部監督の采配にうなったのだ。

 同社が今回の選手権大会で見せた勝負手は、積極的継投とは対照的な我慢の采配だった。決勝の先発に抜てきした入社2年目左腕の増居翔太を3点優勢の9回も続投させ、球数147球での完封勝利を飾った。球数を考慮すれば、中堅投手に継投して歓喜の瞬間を迎えることも考えられる状況だった。しかし采配に温情やドラマ性などを一切挟まず、相手に隙を与えなかった。

 大会期間中には「トーナメントは緩みや隙を見せたときに負ける。基本的にはベストの布陣で臨まなければならない。だから本大会を迎える前段階で、若手にチャレンジできる実力がある選手なのかを判断する必要がある。選手を若手だから起用しているわけではなく、結局は彼らがそのポジションをつかみ取ったわけです」と語っていた。NPBでも社会人野球でも同じく、監督が采配を通じて伝えた覚悟が優勝につながっていった。(記者コラム・河合 洋介)

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