【室井昌也コラム 月に2回は韓情移入】先週15日に行われた「プレミア12」オープニングラウンド・グループBでの日本と韓国の対戦は、日本が6―3で勝利。牧秀悟のタイムリーが決勝打となった。
日本は2―3で1点を追う5回裏、2死後に3連続四死球で満塁のチャンスを得た。この場面で6番・牧はカウント1―1からの3球目、外寄りのスライダーにうまくバットを合わせてセンター前ヒットを放ち2者が還って逆転。4―3とした。
このタイムリーの前の球、1ボールの後の2球目、牧は韓国の4番手投手・李映河(イ・ヨンハ)の外角のスライダーに大きく空振りしている。
この空振りについて捕手の朴東原(パク・トンウォン)は「牧選手は(李)映河のスライダーにまったく合っていなかった。直球を狙っていると思った。映河のスライダーは打つのが難しい。だからスライダーを続けました」と振り返った。
そして李映河も「牧選手は直球を狙っていてスライダーに空振りしたと思いました」と話す一方で、「後から考えてみると、牧選手はわざと空振りをして(次の球の)スライダーを誘ったのでは?と思えるくらい3球目のスライダーにタイミングが合っていました」と話した。
では3球目はスライダーではなく他の球種の方が良かったのか。李映河はこう続けた。「自分はスライダーに自信があるので、仮に相手がスライダーを待っていたとしても、3球目もスライダーで間違いなかったと思っています」
ただ李映河には悔いが残った。「僕にはコースいっぱいを突くスライダーと縦のスライダーがあります。あの時は低めに落ちるスライダーを投げるべきでした。でも満塁だったので(暴投を考えると)難しかったです」
韓国ベンチの崔一彦(チェ・イルオン)投手コーチも李映河と同じく、牧の空振りを「もう1球スライダーを誘う空振り」のように感じたという。一方で「2球目の空振りが本気とした場合、日本以外の打者なら同じ球種をもう1球続けていいけど、日本の打者には通用しない」と攻め方を変える必要があると話した。
今回の韓国の牧への対応について元侍ジャパンスコアラーの志田宗大に尋ねると、志田も「牧選手はスライダーが決して苦手ではない。使用時はある一定の条件がつきます」とスライダーを続ける場合、同じところに投げるのは危険だとした。
李映河をリードした朴東原は「しっかり捉えられたのではなく、うまく合わせてヒットにされてしまったことが惜しかったです。それだけ牧選手がいいバッターなのだと思いました」と語った。
一方の牧は適時打後、「2死からのチャンスで何とか打つことができてよかったです。気持ちで打ちました」とコメントを残した。
オープニングラウンドを3位で終え予選敗退した韓国。チームを率いる柳仲逸(リュ・ジュンイル)監督は最終戦後の会見をこう結んだ。「次のWBCでは必ず本選に行けるようにしっかりと“研究”します」。