マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(51)が18日に母校・愛工大名電をサプライズ訪問。2020年の智弁和歌山に始まり、今月の大阪・大冠、岐阜と5年連続計10校の高校野球部を訪れ臨時指導を行ってきたが、この日はOBとして同校を訪れた。
3年生と女子部員含め45人の野球部員が整列したグラウンドが騒然となった。
目の前に現れたのは伝説の大先輩だった。驚きの声と大きな拍手に迎えられたイチロー氏は「拍手、いらないから。初めてだね」と笑顔であいさつ。間髪入れず「3年生はバッティンググローブ、来たでしょう?回収です。ベスト8は最低、行ってくれないと」と厳しい言葉を口にした。イチロー氏「秋の成績は?」、部員「ベスト16です」、イチロー氏「1回戦負けと一緒でしょ。愛工大名電にとっては」。
「常に気にしている」「見ている」母校の後輩たちにだからこそ、思ったことを素直な言葉で伝えた。「寮や施設などを見学させてもらいました。で、この成績はないでしょ」「気になったのはデータで見えていないことを大事にしているか。それ(データ)だけじゃないこともある。気持ちがどう動くか、感性とか。データでがんじがらめになって、感性が消えていくのが現代の野球」。そして、現在の母校の上下関係にも思うところがあった。
練習後に1年生が時折、2年生に対してため口を使うということを聞き「伝統的に僕のイメージです」と前置きした上で「めっちゃ(昔は)厳しかった。ある程度、上下関係はあってほしい。緩くなったら、ずっと緩くなるよ。だんだん、やさしくなってきて。それは先輩の仕事。緩めるのは簡単だけど、戻すのは大変だからね。明日から、ちゃんとやろうと」と自身の考えを伝えた。
「お互い、長所、短所を指摘しあって、高め合ってください。名電に来るって決めた時、凄い不安があった。長い間、来ていないからどんな雰囲気で野球をやっているのか、怖さの方があったんだけど、みんなと一緒に練習して、実際にやって、やっぱり野球が好きな高校生。気持ちのいい空気だし、頑張ってほしい。また来るかもしれません。母校ですから」
後輩たちとともに白球を追い、愛情ゆえの厳しい言葉もストレートな言葉で伝えたイチロー氏は、再訪を予告し笑顔で母校のグラウンドを後にした。