ノルディックスキー・ジャンプ男子で22年北京冬季五輪ノーマルヒル王者の小林陵侑(28=チームROY)が、24~25年シーズンのW杯開幕戦(22~24日、ノルウェー・リレハンメル)を前にインタビューに応じた。今季は来年2、3月に世界選手権(ノルウェー・トロンヘイム)を控え、26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪のプレシーズンにも当たる。重要な4カ月を前に、日本の男子エースがジャンプへの思いを語った。(取材・構成 阿部 令)
――10月の全日本選手権後は札幌で調整を続けてきた。練習状況や現在の調子は。
「アイストラック(氷表層の助走路)の練習をした。本数は10本未満。やはり秋と雪の中のアイストラックは滑りが変わるので。気持ちを100%でシーズンを迎えられるように(制限した)。手応えはあまりない。自信もあまりない。いつも自信はないです」
――今季からテレマークの配点比重が高まる。左右で入れられるのは強みだが、大会で披露する予定は。
「あまりない。できるのと、試合でやるのは別の話なので。ただ周りへのプレッシャーになるかも。心理戦は大事だと思うので」
――その他のルール変更への対応状況は。
「手応えはそんなに悪くはない。ただシーズン通してどう戦えるかは、自分の気持ち次第だと思う」
――土屋ホームを退社し、プロ転向2季目を迎える。
「一番大きいのは、自分のやりたいことに100%を向けてできること。会社にいたころは建前や、会社員としてやらなければいけないことが多かった。W杯全試合に出て、秋まで国内の全試合に出るのは酷だと思っていた。身体よりも気持ち的な負担。今は試合はオフ(欠場)して準備に充てるとか、そういうことができている。苦しくない」
――その分、自分を律する難しさがあるのではないか。
「やる時はやります。でも好きなことをできる時間が多くなったからこそ、ダレることがなくなった」
――五輪王者になり、さまざまな夢や希望をかなえた。ミラノで再び金メダルを獲ったらかなえたいことは。
「ミラノはファッションブランドがたくさんある。そこで活躍できたらうれしい。(モデルとしてランウエーを)歩いてみたい」
――パリ五輪も観戦し、刺激を受けた。日本のジャンプ競技会に求めたいことは。
「選手は飛ぶことしかできないが、大会をどう興行化、エンタメ化するかは運営側の仕事で、今の時代に追い付いていない。わざわざ(郊外や地方が多い)ジャンプ台に足を運ばせ、ジャンプを見せる以外の何かがないと。現状はさみしい」
――大勢のファンが楽しめている状況で競技を行いたい。
「そうですね。そうなればうれしい」