楽天の昨年のドラフト1位左腕・古謝樹投手(23)が、1年目のシーズンを終え「入団前から掲げていた1軍登板も達成できて、ケガなく1年間過ごせたことはとてもいい経験だった」と振り返った。開幕1軍入りを逃したが、5月下旬から先発ローテーションに食い込み、5勝8敗、防御率4・32。出所の見にくい特徴的なフォームで打者を抑える姿は来季以降のさらなる飛躍を予感させた。
数年前はプロのマウンドに立つことすら想像できなかった。今夏開催されたパリ五輪では、スケートボード女子ストリートで金メダルに輝いた吉沢恋(ACT SB STORE)を見て「14歳ですよね? あれぐらいの時は本当に何もしていなかったので…。世界を股にかけているのは本当に凄いこと」と感心。自身の中学時代は軟式野球部に所属し「いかに楽をして早く帰るか。他のことを考えながら野球をやっていました」と回想するほど、どこにでもいるごく普通の学生だった。湘南学院進学後も大きな注目を浴びることはなく、ホテルマンになることを目指し、周囲から説得されて野球を続けたほど。それでも桐蔭横浜大で花を咲かせ、プロへの道を切り開いた。
今秋ドラフトで楽天が5球団競合の末、交渉権を獲得した「20年に一人の逸材」ともいわれる明大・宗山塁内野手とは大学日本代表で共闘した間柄。ドラフト会議後には「楽天に決まりました。よろしくお願いします」と連絡を受けた。アドバイスをしたのか問うと「自分よりしっかりしているので、体調にだけ気を付けてもらえればいいと思います」と謙虚な答えが返ってきた。
自身の契約更改後の会見では「早川さんが11勝でしたっけ? なので15勝」と高らかに宣言したと思いきや、目標の高さを感じたのか「あ、ちょっと…」と慌てる様子も。グラウンドを離れれば「ごく普通の青年」の顔ものぞく左腕。来季もその素顔とは裏腹に、より多くの白星をつかみ取ってくれるだろう。(記者コラム・花里 雄太)