日本バスケットボール協会(JBA)の渡辺信治事務総長(59)が20日、宇都宮市内で取材に応じ、NBAレーカーズの八村塁(26)が男子日本代表の強化方針やコーチ選定に苦言を呈したことについて「八村選手の発言は本当に重い」「ミスコミュニケーションがあり彼に負担をかけてしまった」と語った。代理人事務所と八村の発言の真意について話したことも明かした渡辺氏。代表の今後についてはトム・ホーバス監督(57)体制で2028年のロサンゼルス五輪に向かう決定は変わらないことを明言した。
渡辺事務総長は「あすからアジア杯の予選が始まる。ホーバス監督体制で出発する重要な試合。我々としては試合に集中してしっかり活動することがこの会見の目的」と説明。そして「八村選手(の存在)は日本バスケ界にとって非常に重要。発言は重く受け止めている。選手が自分の考えを言葉にすること自体は止められない。八村選手の発言は本当に重い」と厳しい表情で語った。
八村の代理人事務所のワッサーマンとは「週末にオンラインでコミュニケーションを取った。1時間ぐらい」と明かした渡辺氏。続けて「五輪前の代表戦を含めてミスコミュニケーションがあり彼に負担をかけてしまった。代表に合流する前に7月の韓国戦は出場できないと聞いていた。欠場発表が試合の当日になった」ことなどが今回の発言の一つの要因となったとした。そして「八村選手を商業目的のために引っ張った意図はなかった」と話した。
続けて「強化試合のあり方の話もしていた。本当に強化になる対戦相手とやるべきではないかという話も聞いていた。我々としては日本で試合をすることでバスケの価値を上げたい。活動の原資を獲得する必要もある」と八村の考えに理解を示しつつ、協会の考え方も説明。コーチ選定については、改めて「ヘッドコーチに関しては我々としてはロス五輪に向けてはホーバス監督の下で進んでいく。最大限バックアップしていく。ハードワーク、組織的な強化が必要。ホーバス監督で行く決定が変わることはない」と明言した。
今後については「NBAの選手は(世界大会しか)来られないので、関係修復の時間的猶予はある。コミュニケーションを取っていきたい。八村選手は(ホーバス監督の続投を)発表をもって知ったと思う。八村選手の見ている世界は僕らとは全然違う。考え方の違いは当然あると思う」と、今回の“協会批判騒動”のきっかけともなった「ミスコミュニケーション」が今後起きないようにしていく強い決意を示した。
八村の発言の真意を確認中としていた協会。前日19日にはJBA副会長で、男子日本代表強化検討委員会の委員長も務めているBリーグの島田慎二チェアマン(54)がこの件に関して「そういう事実があり、あれだけ反響を呼んでいることはポジティブな話ではない。大事なことは事実関係を含めてどのような話し合いがあったのか。ビジネスに対するネガティブなことは何なのか、今は臆測の域を出ない。JBAが代理人を通じて事実確認をしている。ビジネスと強化は車の両輪だと思っている。代表はこの1、2年でバリューが変わって大きく動いた局面だった。その見え方によっては(八村に)そういう印象を持たれたのかもしれない」と自身の考えを語っていた。
八村は13日のグリズリーズ戦後の会見でJBAの強化方針について「僕が思うに、お金の目的がある気がする」と指摘。男子日本代表のコーチ選定については「僕らは日本の男子のトップのプレーヤー。日本代表にふさわしい、男子のことを分かっている、アスリートとしてプロでもやっていた、そういう人がコーチになってほしかった」と不満を口にしていた。その後もX(旧ツイッター)で自身の発言を擁護する一般ファンの投稿のリポストを続けた。
JBAは10月に男子日本代表のホーバス監督と28年ロサンゼルス五輪を見据えて契約を延長。チームはアジア杯予選モンゴル戦(21日、日環アリーナ栃木)、グアム戦(24日、グアム大)に向けて国内で合宿を行っている。