【インタビュー】女優の米倉涼子(49)が主演を務める映画「劇場版ドクターX」(監督田村直己)が12月6日に公開される。テレビ朝日の人気ドラマ「ドクターX」の完結編。同シリーズを支えてきた俳優の西田敏行さん(享年76)は10月に虚血性心疾患のため亡くなった。プライベートでも親交の深かった米倉は、西田さんの言葉を“トシちゃんノート”にしたためている。感謝を胸に、今作を日本中に届ける。(望月 清香)
米倉が現れるとスタジオがパッと華やいだ。あまりのオーラに圧倒されながら、中学時代からシリーズのファンであることを伝えると「そんなに若い時から!?ありがとう」と気さくに笑った。
「ドクターX」は、フリーランスの天才外科医・大門未知子を描いた作品。「私、失敗しないので」のセリフがおなじみで、過去のドラマ7シリーズ全てが平均世帯視聴率15%超えの人気を誇る。映画では大門の知られざるルーツが明かされる。
「“大門未知子を演じているのだから強くならないと”と思って続けてきた」。だからこそ、いつもエネルギッシュで爽やかだが、シリーズの終幕について聞くと「あれ、何で泣いてるんだ?」と慌てて目頭を押さえた。長い時をともに過ごしてきた共演者、スタッフの顔が浮かぶのだろう。「一匹狼の未知子を作ってくれた皆さんのおかげで『ドクターX』ができあがった。こういう形でラストを迎えられてうれしい」と感謝した。
シリーズの人気の理由の一つが、息の合った掛け合い。緊迫した医療シーンの中にも、クスリと笑えるセリフやアドリブがちりばめられている。「チームというよりも家族。“何をするんだろう?”という警戒と期待がいっぱいのお芝居でした。信頼度はどこにも負けないチームです」。
ハイレベルな“アドリブ合戦”を先頭で引っ張っていたのが、西田さんだ。西田さんは大門を目の敵にする病院の重鎮・蛭間重勝役で2013年放送の第2シリーズから出演。腹黒い男を愛嬌(あいきょう)たっぷりに演じ、唯一無二のキャラクターを作り上げた。
「西田さんが演じるからチャーミングさが押し出される。チャーミングな人がちょっと怖いことをすると本当に怖く見える。そのあんばいが凄くて…。日本を代表する、欠かせない俳優さんがいてくださった。ここまでこられたのは、西田さんがみんなを一つにまとめて刺激を与えてくれたからだと思います」。
そんな尊敬する俳優との現場は貴重な時間だった。「“トシちゃん語録”を書いているんです」。西田さんからの“金言”をノートに書き残しているという。「心に響いた言葉をノートにメモして枕元に置いています。何を書いているか?と聞かれてもそれは私の宝物です」とイタズラっぽく笑った。1日の終わりに、いつでも見返すことができるようにしているのだろう。“トシちゃんノート”はこれからも米倉の道しるべになるはずだ。
西田さんとの最後の共演作となった今作。西田さんは公開を心待ちにしていた。「“絶対に劇場に見に行く”と言っていた。最近は膝が悪くて車椅子だったけど、車椅子もなく、劇場のどこかに来ていると思います」。天国の恩師を思う笑顔は優しく穏やかだった。
《「見習いたい。未知子はいつもポジティブ」》 自身の性格について「考え始めたら迷うタイプ」と分析した。大門は米倉にとって理想の自分なのかもしれない。「未知子は“悔しい~!”って文句を言っていても、いつもポジティブで、前向きな文句を言っている。そういうところを見習いたいです」。大門を12年にわたって演じたことは心の支えにもなっていた。「未知子のように強くないといけない時がある。そういう時、大門未知子に米倉涼子が背中を押されている感じがします」と役柄に感謝した。