◇大相撲九州場所11日目(2024年11月20日 福岡国際センター)
平幕の隆の勝が新大関・大の里を押し出しで破り1敗を守った。相手の右差しを封じて右喉輪から迫力十分の攻め。叩き上げの意地を見せ優勝争いを盛り上げている。琴桜が小結・若元春を、豊昇龍も関脇・大栄翔をそれぞれ退け、大関2人が10勝目。2敗の阿炎、尊富士がともに敗れため、1敗3人を平幕5人が2差で追う展開になった。
会心の勝利にトレードマークの丸い顔をくしゃくしゃにした。1敗を死守した隆の勝は「中に入れていい流れだった」と声を弾ませた。
大の里撃破のポイントは2つあった。「組まれないこと、押し負けないこと。そこを意識した」。立ち合いで左に動きながら大関得意の右四つを阻止し、前回の対戦で左おっつけで封じられた右喉輪もグーンと伸びた。上体がくの字になった大の里が苦し紛れの首投げにいったところを逃さず浅いもろ差し。そのまま押し出した。
もともと緊張するタイプで稽古場の強さを実戦で発揮できなかった。冷静に取れるようになったきっかけは母・石井雅代さんのアドバイス。「もっと周りを見なさい」と助言され、緊張することも減ったという。
以前は土俵下の控えで対戦相手しか見えなかったが「今はお客さんも見えるようになった。今日もよく見えていたと思う」。15歳で入門して15年の叩き上げ。学生力士の台頭が目立つなか「若い頃は悔しい思いをした」と述懐するが、大一番で意地を示した。「地道にやってきた自負もある」と胸を張る。
2敗が消え、同じ柏相撲少年団出身の琴桜、日体大柏高出身の豊昇龍との「柏巴戦」の様相を呈してきた。「一日一番を意識してやっていきたい」。悲願の初優勝に向け、30歳の視界は大きく開けてきた。