5人組ヴィジュアル系ロックバンド「RAZOR」(レザー)が、結成8周年を記念した全国ツアーを精力的に巡っている。先月リリースされたベスト盤「残光」には、リード曲「AfterGlow」をはじめ、RAZORの歴史と現在が凝縮された全12曲を収録。バンドとの向き合い方やツアー中のエピソード、そして未来へのビジョンを見つめるメンバーに迫るソロインタビュー連載をお届けする。2回目はドラムのNIKKYです。
――「残光」の発売から1カ月が経ちました。どのようなアルバムになったと感じていますか?
NIKKY「アルバムの最後に『さよなら』という曲が収録されています。この曲は昔からあったもので、リメイクして収録しました。それ以外の曲は、僕が2020年に加入した後に作られたものです。1曲目の『AfterGlow』から始まって、僕が加入してからの歴史を振り返るような内容になっていて、自分でも聴くとたくさんの思い出がよみがえります。特に加入してすぐにコロナの流行で、身動きが取れない状況になってしまったので、この時期苦労したとかバンドで何もできなかったなとか色々思い出します」
――ライブで披露する中で、曲が成長したと感じたり、ファンの反応に新たな発見があった曲はありますか?
NIKKY「『瓦礫』という曲は、コロナが明けたくらいにできた曲です。当時はライブ会場でも密にならないように観客数に制限があったり、ライブ自体に行きづらい空気感がありました。なので、お客さんの反応がわかりにくい部分もありましたし、お客さん自身も戸惑いがあったと思います。そんな中、披露し続けて、ライブハウスの制限が徐々に緩和されて、観客の皆さんが盛り上がる様子が見られるようになり、数年かけて手応えをつかんだ曲だと感じています」
――「瓦礫」の秘めていたエネルギーが解放されたということでしょうか。
NIKKY「当初は『あまりウケないかな』と思っていましたが、時間が経つにつれて反応が増えてきて、今では良かったなと実感しています」
――収録曲の「AfterGlow」はテレビの深夜番組でも流されていて非常にプッシュされていますね。この曲を演奏する際に、どんなこだわりがありますか?
NIKKY「自分がドラムをやってきた中で常に心がけていることがあるんです。それは『いいライブはいい演奏から始まる』です。特に新しくて激しい曲を作るときには、少し自分の中で難しいと思うフレーズを取り入れるようにしています。実際『AfterGlow』ができたときドラムが大変だと感じて、しっかり練習しました。ドラムソロが2カ所あって、頭のイントロと中盤にドラムの見せ場があります。『いいライブはいい演奏から。いい演奏はドラムから』と、自分が思っているテーマを主張できる一曲として、真剣にかつ楽しんで演奏しています」
――こだわりを持って演奏されている曲がメディアやステージを通してたくさんの方に聴かれていますが、そういった反響や感想をいただくことはありますか?
NIKKY「もちろん、全体的に『かっこいい』といった感想もうれしいんですけど、特に冒頭のドラムがかっこいいと言われると、やっぱりやりがいがありますね。そういった細かい部分を褒められるのは一番嬉しいかもしれません」
――先月末、ボーカルの猟牙さんが「現代社会とヴィジュアル系」についてSNSに長文投稿をされていましたが、NIKKYさん自身、このテーマについてどんなことを思い浮かべますか?
NIKKY「ヴィジュアル系の全盛期は1990年代から2000年代前半だったと思うんですけど、今はどうしてもアイドルやK-POPの影響が強く、シーンから遠ざかっている人は少なくないと感じます。僕自身も最初はそんなに詳しくなかったけど、音楽を聴いてみたら『かっこいいじゃん』と思ったんです。だから、ヴィジュアル系をあまり知らない方に一度聴いてみていただければ、何か響くものがあるかもしれません。ヴィジュアル系としてとらえるよりは、音楽グループとして興味を持っていただけたらうれしいですね」
――8周年ツアーを開催中ですが、ツアー中で印象に残っているエピソードはありますか?
NIKKY「今回の8周年ツアーの埼玉公演でちょっとしたトラブルがありました。ライブの演奏中、猟牙さんがハプニングを起こしまして…記事で絶対に書けないようなことなんですが、その光景を目の当たりにしたとき、僕はライブ中で一番爆笑しました。伝説に残るエピソードになると思います」
――何があったか気になります。
NIKKY「歌っている途中で衣装が破れちゃって…それ以上は口が裂けても言えませんが、何とかごまかそうとして、僕の方を見ながら歌う猟牙さんの姿がおかしくて(笑)。果たして、前列のお客さんは気づいてたんでしょうか」
――「ロック」な出来事があったんですね。もう少し詳細を明かせるエピソードもお聞きしていいですか。
NIKKY「実は、ツアー中にもう一つ印象的な出来事がありました。ある公演で、手違いで予定していたセットリストとは違う曲が流れ始めてしまったんです。これはシンセサイザーの音から始まる曲なのですが、メンバー全員がすぐに予定とは違う曲だとすぐに気づいて、急遽その曲を何事もなかったかのように演奏しました。そのときに、8周年ツアーの一体感がすごく感じられて、みんなが長年やってきた信頼と連携を改めて実感しました」
――硬軟織り交ぜたエピソードを披露していただきありがとうございました。11月30日で結成8周年となりますが、NIKKYさんは2020年からの加入で、もう4年になりますね。現時点でこのバンドで実現できたことはありますか?
NIKKY「最初はライブ自体ができず、ほとんどが配信ライブで、その後は人数制限のあるライブが続いて、本当に苦しいスタートでした。加入からの1、2年は、ただひたすらいろんな人に見てもらいたいという一心でライブを続けていました。気付けば、制限がなくなって全国を回れるようになって…。でも何かを実現できたという感覚はまだ薄いんです。今はもっと多くの人に聴いてもらいたい、ヴィジュアル系を知らない方にも届けたいという想いが強くなっています。もちろん、応援してくれているファンの方々にもさらに響く活動を広げていきたいです」
――11月30日のツアーファイナル、恵比寿LIQUIDROOMへの意気込みと、さらに年末のカウントダウンライブやワンマンも控えていますのでそちらへの抱負をお願いします。
NIKKY「RAZORの周年日は11月30日で、毎年怒涛のツアーを走り抜けて周年日が終わると、すぐ12月になります。それで『今年もお疲れ様でした』と1年が終わって、『今年も終わっちゃったな』ってなるんです。だから今年は特に、ツアーの一本一本を大切にかみしめながらやっていますし、ファイナルに向けてファンの皆さんにとっても特別なライブにしたいと思っています。12月のワンマンや年末のカウントダウンイベントも、2024年の締めくくりとしてかみしめながら心を込めていいライブを届けていきたいです」