阪神から国内フリーエージェント(FA)権を行使した大山悠輔内野手(29)が21日、神戸市の有馬ロイヤルGCで行われた「タイガース杯ゴルフ」に参加し、13日の宣言表明後、初めて公の場に姿を現した。宣言残留を認める阪神と、その阪神を上回る条件を提示しているもようの巨人が争奪戦を繰り広げており、その動向に今オフ最大級の注目が集まっている現状。「今は何もお話しできることはない」などと悩める胸中を明かした上で、「決断した時には自分の口から報告する」と語った。
13日にFA権の行使を表明し、15日に交渉が解禁となった。他球団との交渉のテーブルに着き、見えてきた景色があるに違いない。阪神に在籍した8年間での数々のシーンが、フラッシュバックする時間も増えたはずだ。大山は、悩んでいる。残留か。移籍か。野球人生で最大の岐路。結論を、そんなに簡単に下せるはずがない。
「今はまだ何も話せることはないです」
担当記者に囲まれた大山は、そのフレーズを8度も繰り返した。現状、決断時期、巨人からのオファー…次々と繰り出された、それらすべての質問に、何一つ表情を変えることなく、静かに、その言葉を絞り出した。その上で、言葉を継いだ。
「しっかり決断した時に、自分の口から報告するので」
この日使用したクラブのシャフトがオレンジ色だっただけで、周囲がザワついた。一つ前の組で粟井一夫球団社長がラウンドしていただけで何かあるのでは…と勘ぐられた。大山が貝になればなるほど周囲の臆測は広がるが、それも仕方ない。それだけの決断だ。
FA申請期限の最終日13日まで宣言するか否かで悩み、今は来季どこでプレーするかを悩む。巨人からは大型契約を提示されたであろうことは想像に難くない。Aランクの推定年俸2億8000万円からの大幅昇給、契約年数の延長が見込まれる。虎の4番打者の去就で、勢力図は大きく変わる。その動向に伴い、阪神の戦力編成も大きく動き出すことになる。新外国人、トレード…「4番・一塁」が抜けた時の穴は決して小さくない。だから悩みは深くなる。
「自分自身、毎日、自問自答しながら毎日いるので、そういう意味では、ゴルフをしている時は、ちょっと忘れることができたので、楽しかった」
この日は、近本、木浪、中野と同組でゴルフを回り、その間だけ苦悩から解放された。「どういう決断をするにしろ、1年間の感謝の気持ち、そこはしっかり僕は伝えたいと思うので参加することは決めています。FA宣言している身ではありますけど、そことはまた別のところで、僕はしっかりやりたいと思っているので」と23日のファン感謝デーへの参加も明言した。タテジマの主砲としての役割を全うした先は…本人のみが知る。