【ヤナギタイムズ】日本ハム時代の13年12月から大谷を本格取材し、TBS系情報番組「ひるおび」、「ゴゴスマ」などに随時出演する本紙MLB担当・柳原直之記者の連載コラム「ヤナギタイムズ」。今回は3度目のMVP受賞について、さらに今後の可能性についてレポートした。
4シーズンで3度目のMVP。それも全て満票だが、唯一、受賞を逃した22年が価値あるシーズンだったことは覚えておきたい。
22年は投手で28試合、166回を投げ15勝9敗、防御率2・33、219奪三振。打者で157試合、666打席に立ち打率・273、34本塁打、95打点。投打でダブル規定到達という前人未到の快挙を果たしたが、MVP投票はア・リーグ新の62本塁打を放ったヤンキース・ジャッジが1位票を28票集め、当時エンゼルスの大谷は2票。大差で敗れたとはいえ、その28人全員が2位票は大谷という完全な一騎打ちだった。
ただ、ダブル規定到達はこれが最初で最後となる可能性すらある壁の高い記録で、過小評価されていないか。当時の大谷も「安定して出ればどちらもいける範囲の数字とは認識したが、無理して狙うことではないというのが率直なところ」と目指すことによる負担の大きさを吐露していた。番記者という立場を差し引いても、今回で“実質4年連続MVP”は過言ではないはずだ。
投手復帰する来季は手術明けでイニング数や球数が制限されるため、規定投球回到達は現実的ではないが、二刀流として再び9勝&46本塁打の21年、10勝&44本塁打の23年のような活躍ができれば、歴代単独2位の4度目のMVPが近づく。受賞発表中継で、プレゼンターを務めた同僚左腕カーショー以来となるMVPとサイ・ヤング賞の同時受賞を期待する声に「そうなれば最高。まずは復帰して、もう一回さらに強くなったパフォーマンスを出して、自信を持ってマウンドに上がれるのが目標」と語った大谷の表情はいつも以上にキラキラしていた。
23年オフのNHKのインタビューでは「投手としては2度目の手術なので、おそらくもう一度同じ症状になったら配置転換」と再び肘に大きな故障があれば“一刀流”になる可能性を自ら明かしていたが、まだ30歳だ。ドジャースとの契約は9年残っている。ダブル規定到達が“最初で最後となる可能性”という私の見立てを覆し、サイ・ヤング賞はもちろん、バリー・ボンズが保持する7度受賞の最多記録を更新してほしい。夢を超える現実を、まだまだ見たい。