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RAZOR・IZA バンド愛と武道館への夢「ダサくても口に出す」【ソロインタビュー連載第4回】

スポニチアネックス 2024年11月24日 11時1分

 5人組ヴィジュアル系ロックバンド「RAZOR」(レザー)が、結成8周年を記念した全国ツアーを精力的に巡っている。先月リリースされたベスト盤「残光」には、リード曲「AfterGlow」をはじめ、RAZORの歴史と現在が凝縮された全12曲を収録。バンドとの向き合い方やツアー中のエピソード、そして未来へのビジョンを見つめるメンバーに迫るソロインタビュー連載をお届けする。4回目はベースのIZAです。

――ベスト盤「残光」が発売されてから、約1カ月が経ちましたが、今どのようなアルバムだと感じていますか?

IZA「今回のベスト盤には、最初の曲が「瓦礫」で、これは3年前にリリースしたミニアルバムに収録されていたものです。そこから順々にシングルが入っていますが、3年前はちょうどコロナ禍の真っ只中で、ライブにお客さんを入れることもできない状況だったんです。その時期のミニアルバムやシングルは、曲をじっくり育てられなかった記憶が強く残っています。

こうしてベスト盤を出して、ツアーで再演することで、当時育てられなかった曲たちを今再び表現する機会が持てています。同じ曲でも3年経って再び演奏すると、新たな印象が生まれてくるんですよね。こうしたベスト盤ならではの良さがあると思います。また、3~4年前に出した『五枚刃』というベスト盤に続くもので、ファンにとっても、この3~4年のRAZORの進化が詰まったものを体感できる、そんなアルバムになっているんじゃないかなと感じています」

――改めて聞き直すと、当時の思い出がよみがえることもあるのではないでしょうか。

IZA「めちゃくちゃ思い出しますね。特に無観客でライブをやっていた時期の楽曲を今披露すると、その時のことが鮮明に蘇ってきます。観客がいない中で演奏しながら、本当に世の中がいつか元に戻るのか、もしかしたら何十年先になるのかと、僕らも不安な気持ちでいっぱいでした。事務所やスタッフも手探り状態で、どうすればいいか悩みながら続けていました。そんな状況を思い出し、今ファンの前で演奏できる喜びを改めて感じています」

――収録曲の中で「AfterGlow」が深夜のテレビで流れていると伺いましたが、どんなお気持ちですか?

IZA「そうなんですよね、大阪や東京でも流れ始めていて、テレビや有線でふと聞こえてくることが増えました。例えば居酒屋などの騒がしい場所でも、自分の曲だとイントロやメロディーが自然と耳に入ってきて、『あれ、聞いたことあるな』って気づくことが多いですね。自分たちの楽曲だと脳にバンと響く感じがあって面白いです」

――「AfterGlow」について、制作面でのこだわりがあれば教えてください。

IZA「作曲者の剣から、今回のベースについてシンプルに抑えてほしいという指定がありました。普段はメロディアスなベースを弾くのが好きなんですが、今回はルート弾き中心でシンプルに徹しました。このシンプルさが曲の持つ余韻を強調しているので、そこがポイントになっていると思います」

――「シンプルにベースを弾く」という指示があったとのことですが、それは難しいものでしょうか?

IZA「そうですね、長くやっていると、どうしても自分の得意なアレンジを入れたくなったり、個性を出したくなるんです。でも、逆にそれを抑え込むことが、曲にとって良い方向に働く場合もあるんです。多分剣はその点を考慮して、シンプルにとリクエストしてきたんだと思います。僕たちは楽曲ごとにディスカッションを重ねて、細かい部分で『ここはこうしてほしい』とか『こういう意図で弾いてるから残したい』といった話をよくします。

 今回も剣の意図を理解して、『なるほど、じゃあその通りに弾いてみよう』と思い、その通りにやってみました。結果としてレコーディングも良い感じになり、逆に個性を抑えたことで新しい面を見せられた気がしますね」

――10月31日にボーカルの猟牙さんがXで「現代社会とヴィジュアル系」というテーマで投稿がありましたが、ご覧になりましたか?

IZA「いや、全く見てないです(笑)。それについては知らないですね」

――ヴィジュアル系を20年続けてこられたとのことですが、ジャンルの移り変わりについてどのように感じていますか?

IZA「ヴィジュアル系はもともとサブカル的なアングラジャンルという認識でやってきました。クラスのみんながJ-POPを聴いている中で、ほんの少数が好んで聴く音楽という感じで、そうした人たちが集まって盛り上がるジャンルだったんです。20年前にはバンドブームもあって、YOSHIKIさんをはじめメディアでの露出もありましたが、今は音楽が多様化して、色々なジャンルが聞かれるようになっていますね。

 その多様化のおかげで音楽が身近になった反面、ヴィジュアル系というジャンル自体はさらに狭くなった印象です。僕の学生時代は洋楽、特に80年代・90年代のヘビーメタルにハマっていたんですが、ちょうどそのジャンルも廃れていく時期でした。そうした音楽もまた流行る時があるように、ヴィジュアル系も再び注目される時が来るだろうと思っています。でも、それがいつになるかはわかりません。

 この20年間、僕がヴィジュアル系を続けてこられたのは、このアングラなジャンルが好きだからというのもありますし、何よりも自分の性格に合っていたからだと思います。流行に流されるのが嫌いで、ゲームでも音楽でも自分の好きなものを追いたい性格なんですよね。これから先、ヴィジュアル系がどうなっていくかはわかりませんが、僕たちの使命として、このジャンルが絶えないように少しでも広げていければと思っています」

――最近は新しいバンドも増えてきていますが、どう感じられますか?

IZA「そうですね、DEZERTや0.1gの誤算みたいに、若者向けのわかりやすいヴィジュアル系のバンドが出てきていますよね。ヴィジュアル系の中でもすごく多様化していて、これがまた新しい風を吹き込んでくれているなと感じます。楽器を弾かなくてもヴィジュアル系として成り立つっていうのは、自由な表現がさらに広がった証拠で、すごく大事だと思います」

――結成8周年のホールツアー中ですが、舞台裏でのエピソードがあれば教えてください。

IZA「基本的に、僕らの関係性は結成当初からあまり変わっていないんです。ですが、8年続けてきたことで、お互いの良い部分や必要のない部分が自然とわかってきて、よりコミュニケーションが取りやすくなったと思います。今ツアーもそうで、なんというか、8年やってきたことでお互いをより深く理解し合いながら演奏できているなという感覚があります。

もちろん、この8年の間には良い時も悪い時もありました。終わるかもしれないというピンチも何度かありましたが、その都度お互いの気持ちを理解し合い、支え合って乗り越えてきました。だからこそ、今回の8周年ツアーはとてもいい形で迎えられているなと感じていますね」

――楽屋や一緒にいるとき、8年間やってきて本当に良かったなと感じる瞬間もあるのではないですか?

IZA「本当にそうですね。個人的にも、無駄なコミュニケーションを取らなくても、互いに理解し合えているというのは嬉しいことです。話さなくてもいい関係性が築けているからこそ、安心して一緒にいられるんです。それが今回の8周年ツアーを回っていて、特に感じる部分ですね」

――ピンチを乗り越えることで、やはり強くなっていくものなのでしょうか?

IZA「そうですね、どのバンドにも試練はあると思いますが、僕らはちゃんと話し合ってきたのが大きいと思います。面倒でも、お互いの意見や気持ちを尊重し合いながらコミュニケーションを取ってきました。たとえ嫌なことがあっても、話し合わないことで不満が積もり、修復不可能になるよりは、ちゃんと意見を言い合うほうが良いんです。もちろん、そのせいで関係が悪化することもありますが、最終的には互いに認め合い、『続けていこう』という気持ちになれるんです。

 こうしてピンチを乗り越えてきた分だけ、僕らの絆も強くなっているんだと実感しますね」

――11月30日で結成8周年を迎えますが、現時点で実現できて嬉しかったことや、今後バンドとして目指していることはありますか?

IZA「そうですね、結成当初から、とにかくバンドを長く続けたいという気持ちが一番にありました。もちろん売れていけば嬉しいですけど、爆発的な成功を求めるよりも、長く続けていきたいという思いが強かったんです。そして、8年というのは僕にとってひとつの目標でもありました。実はボーカルの猟牙が以前やっていたバンドが8年で解散したこともあって、彼と一緒にやるなら最低でも8年は続けたいと思っていたんです。

こうして8年を迎えられたことは純粋に嬉しいですね。冷静に考えると、このジャンルでは長く続いている方だとも思います。今の目標としては、まずは10周年を迎えることですね。10年目には、これまでのRAZORの集大成をしっかり見せられるようにしたいと思っています。ただ長く続けるだけでなく、10年かけて培ってきたパワーをぶつけるような年にしたい。メンバーや事務所と色々と話し合いながら、10年目に向けて準備を進めているところですし、それが今とても楽しいですね。どんな自分たちを見せられるか、楽しみです」

――バンドとしての目標は何かありますか?

IZA「ありますね。少し前までは、あまり大きな目標を口に出すのはダサいかなとか、もっと現実的な目標にしておいた方がいいんじゃないかと考えていたんです。でも最近は言霊ってあるだろうって強く思うようになりました。目標を口に出さないと実現しないな、と考え方が変わってきたんです。

それで、僕はずっとRAZORで武道館に立ちたいといろんなところで言っています。もしかしたら無謀だとか、今の段階では難しいと思われるかもしれませんが、それでも挑戦してみたいんです。長く続ければ続けるほど、新しい目標を掲げるのは難しくなるんですが、今だからこそもう一度チャレンジして、全員で目標に向かっていくのが楽しいんじゃないかと思うようになってきました。

実は、武道館でライブをやりたいという気持ちは昔からずっとあったんです。周りのバンドが武道館公演をやるのを見て、さらに刺激を受けましたが、それだけでなく、自分たちも8年やってきたからこそ新たな気持ちで進んでいきたいと思います。やっぱり自分がワクワクしていないと楽しくなくなってしまうので、そういう気持ちを大事にして、口に出すようにしています。RAZORはかっこいいバンドだと自負していますし、それを自分たちで証明したいですね。あとは、その目標に向かってどれだけ努力できるか。いつかどうにかして実現したいと思っています」

――年齢を重ねると、新たな目標を掲げることの大切さがより実感されるものですよね。

IZA「そうなんです。僕らもメンバー全員がもうすぐ40歳を迎える年齢に差し掛かっていて、音楽歴自体も20年ほどになるメンバーばかりです。長くやっていると、どうしてもマンネリ化しがちで、新しい刺激を取り入れるのが本当に大変だと感じています。だからこそ、音楽や日常の中で、なるべく新しいことに触れて刺激を取り入れるように心がけています」

――年齢を重ねたからこそ、口に出して目標を掲げるのが重要なんですね。

IZA「そうですね、最近は本当にそう思うようになりました。小さい頃の将来の夢みたいなものではないですけど、口に出すことで周りの人がサポートしてくれる部分も出てくるかもしれませんし、自分自身も目標に対して真剣に向き合えるんじゃないかと感じています。やっぱり、言うことで実現に近づくんだなと実感していますね」

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