俳優の吉高由里子（36）主演のNHK大河ドラマ「光る君へ」（日曜後8:00）は24日、第45話「はばたき」が放送され、柄本佑（37）演じる藤原道長が出家した。主人公・まひろと交わした「民のための政」を目指してきた道長が大きな節目を迎えた。柄本がスポニチのインタビューに応え、クランクアップを終えた心境や道長とまひろの関係を語った。
＜※以下、ネタバレ有＞
「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛～僕を忘れる君と」などを生んだ“ラブストーリーの名手”大石氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となる。
さっぱりした剃髪姿で登場した柄本。特殊メークは使わず、自身の頭を丸めた。「4日目くらいに風邪気味になりました」と明かして笑いを誘った。だんだんと慣れてきたようで、「快適です！」と笑った。地毛で髻（もとどり）を結ったのも髪の毛を剃ったのも柄本の強いこだわりから。「一昨年の6月くらいから髪をずっと伸ばしてきたので、剃髪のシーンは歴史を感じずにはいられなかった。剃った毛が手の甲に当たった時にグッときた。不思議な感覚でした」と感慨深げだった。
道長の出家の理由について、「まひろがいなくなっちゃったからとしか思えない」と語った。道長は嫡妻・倫子（黒木華）には「体も衰えた。休みたい」と説明する。「“疲れた”という理由で出家している。この地に足が着いた感じが大石先生のいいなと思うところ。分かる言葉で書かれている。立派ではない道長さんをつくっていただいた。立派ではないところが僕はとってもいいなと思いました」と、従来のイメージを覆す新たな道長像について思いを語った。
最高権力者に上り詰めた道長にとって、唯一三郎に戻れる相手がまひろだった。「道長は気がついたら“対まひろかその他大勢”になっている。台本のト書きにも“道長はまひろのことになると周りが見えなくなる”と書かれていた。心掛けていたというよりも自然にそうなっていました」
まひろを愛している一方で、まひろ以外からの好意には鈍感。道長を長年支えている嫡妻・倫子、もう1人の妻・明子（瀧内公美）、藤原行成（渡辺大知）の思いに真正面から向き合わない。柄本は「僕も気の毒だなと思いながらやっていました」と率直な思いを口にした。
2人の妻について、「倫子さんは仕事仲間で、明子さんは仕事に疲れた時のオアシス」と説明。「倫子さんとも明子さんともいざこざがあって内裏に寝泊まりする。結局どちらにも向き合っていない。これはまずいなと思いながら、道長さんがもつ大らかさにつながればいいなと思ってやっています」と打ち明けた。行成の思いについては、「気づいていない」と語った。
鈍感なのは、藤原賢子（南沙良）を巡っても同じ。道長は第45話で賢子が自身の子供であることを初めて知る。「僕は気づくだろうと思っていたんですけど、チーフ演出の中島（由貴）さんは“道長はとにかく気づかないよ”と言っていました。見る方がどう見るかは自由。見て楽しい方で見ていただけたら」。道長は賢子が自分の子供だと告げられた直後に、「お前とはもう会えぬのか」と、まひろへの思いを口にする。柄本は「とにかくまひろなんですよね。あはははは！」と、あまりの道長のぞっこんぶりに笑った。
まひろへの切ない思いや権力者としての葛藤を繊細に演じ切った柄本。クランクアップを終え、「まだ実感がない。どこかで終わりたくないと思っています」と吐露した。今作の共演者、スタッフとは特別な一体感があるという。「絆が自然とできあがる。大石静先生が掛かれている複雑な本にみんなで向かっているものづくりの楽しさがある。準備期間を入れたら一緒に2年戦ってきたので、次の現場で誰もいないのが不安です」。大きな充実感ゆえの喪失感をにじませた。