吉高由里子（36）主演のNHK大河ドラマ「光る君へ」（日曜後8:00）は24日、第45話「はばたき」が放送され、歌舞伎俳優の片岡千之助（24）演じる敦康親王が最期を迎えた。敦康は一条天皇（塩野瑛久）と藤原定子（高畑充希）の第一皇子。敦康を雅に儚く演じた千之助がスポニチのインタビューに応え、藤原彰子（見上愛）への思いなどを語った。
＜※以下、ネタバレ有＞
「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛～僕を忘れる君と」などを生んだ“ラブストーリーの名手”大石氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高由里子は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となる。
「源氏物語」は歌舞伎の世界でもなじみが深い。「歌舞伎でいつか光源氏をやりたいと願っている。光源氏のモデルの1人となったキャラクター演じることができて夢に近づけました」と喜びを語った。
幼くして母・定子を亡くした敦康。千之助は「定子の記憶はほぼ残っていないんじゃないかな」と語る。母に甘えることのできない寂しさを埋めたのが、他でもない彰子だった。「定子を求める気持ちはどこかしらにある。お母さんに甘えられない寂しさ、男として女性に甘える気持ちが全部彰子に向かっている。だからこそ慕っていたのだと思います」
孤独同士の2人はお互いを心の拠り所とし、絆を育んでいく。「彰子は唯一心を開ける存在であり、2人だけのつながりがある。敦康は彰子に恋愛と似た感情を持っていたのかもしれないけど、何よりも彰子からの愛情を感じて、それに幼い頃から応えようとしていた。まとめるとひとつの深い絆であり愛情なのかな」と語った。
「事件」が起きたのは第41話「揺らぎ」（10月27日放送）。元服した敦康が内裏を訪ね、「お顔が見えねばつまりませぬ」と彰子の御簾を越える。千之助は「自分でも“越えた！”とびっくりしました」とし、「『源氏物語』に重ねるといやらしく思えるが、本当に顔を見たい一心だったんだと思う。純粋な気持ち。ずっと一緒に生きてきて、信頼していて、愛している人に御簾越しでしか会えない辛さがあった」と語った。しかし、藤原道長（柄本佑）はこれに危機感を抱く。敦康を義母・藤壺との間に不義の子を作った光源氏に重ね、内裏に上がれないようにした。
敦康は道長によって彰子から遠ざけられ、東宮の座を奪われ、21歳でこの世を去る。一見すると悲劇的な人生だが、千之助は「いいタイミングで逝ったんじゃないかなと思います」と楽観的に語った。
第43話「輝きののちに」（11月10日放送）で敦康は彰子に久しぶりに再会。かつては儚く消え入りそうだった彰子が国母としての風格を持ったことに安堵（あんど）の表情を浮かべる。「凄くホッとしてやり切って逝った。敦康は子供ながらに彰子を守らなければと思っていた。ずっとその気持ちの延長線上で生きていたんだと思います」と、敦康の気持ちを代弁した。
千之助には、敦康の姿が今年2月に亡くなった自身の祖母に重なったという。千之助の活躍を喜んでいた祖母は、千之助の主演映画「橋ものがたり『約束』」の完成披露に訪れた。「終わってみんなでご飯を食べた時に“とにかく安心した”と言ってくれた。それから1週間も経たないで突然亡くなってしまった。母は“貴方の晴れ姿を見て安心したんじゃないか”と言ってくれた。何か通じるものを感じました」と語った。一方で、幼い娘を残したことについて、「唯一歯がゆく残念だと思うこと。娘が大きくなった時の姿を見たいという気持ちは強かったと思います」と悔やんだ。
敦康の気持ちについて実体験を交えながら自分の言葉で語った千之助。役柄同様の賢さと品格が感じられた。