元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士が25日、フジテレビの情報番組「めざまし8(エイト)」(月~金曜前8・00)に出演。兵庫県の斎藤元彦知事に公選法違反の疑いが指摘されていることについて言及した。
斎藤氏を支援したPR会社の経営者がネット上で、同氏の選挙戦でSNS戦略を提案し「広報全般を任された」などとつづった。公選法では選挙活動で報酬を支払える対象は事務員や車上運動員、手話通訳者らに限定されており、兵庫県選挙管理委員会は「PR会社の記事は把握している。一般論として、報酬が支払われていたら公選法違反に当たる場合がある」と認識を示した。斎藤氏は22日、報道陣の取材に「法に抵触することはしていない」と述べた。
公選法違反の「運動買収」に当たれば斎藤氏は失職。次点が繰り上がるのではなく、18億円かかると批判された県知事選が再び行われることになる。
若狭氏は公選法違反の可能性について「選挙運動の買収は公職選挙法の中でかなり悪質。捜査機関が何も動かずに終わる可能性は少ないのでは」とし、「今後選挙の費用をまとめた収支報告書を提出することになっているので、ここでPR会社にいくら払ったか明らかになってくる」と指摘。
若狭氏は「斎藤知事には収賄罪の疑いがあると私は思っています。単なる選挙の買収だけではなく収賄罪の疑いがあると思う」と言い、その理由について「収賄罪というのは事前収賄罪といって例えば候補者が事前に“自分が当選した暁にはこういうことをあなたにしてあげますから”ということを言って業者との間でそういう話し合いができて、業者が候補者に対して何らかのサービスをする。例えば今回で言えば、SNSの運用などをただでやってあげること」と説明。
「ただでやってあげるというのはなぜなのか。時間と費用をかけて、なぜただでやってあげるのかといった場合には、結局PR会社の代表は県のいろいろな委員会の委員をやっている。有識者として知事から指名されていると。そうすると、1つの推定ですけれども、知事が当選した暁にはまた委員などにさせてくださいねっていうような話をして、知事も分かった分かったと言って、当選した暁にはそうしますよという話し合いができていたとしたら、ただで費用をもらわないでSNSの戦略的なことで一切費用をもらわないで、ただでサービスでやってあげるということもあり得るんです」と例を出しながら解説。
そのうえで「でも、ただでやるということは賄賂なんです。事前収賄罪というのがあるんです。それの可能性がある」と指摘。「要は今回の事件はお金を払っていれば公職選挙法違反の買収罪になるし、お金を払ってなくて、ただ単にただでやってもらったということになると今度は事前収賄罪というのが成立する余地が出てくる」とし、「いずれにしてもどっちかなんですけど、捜査機関は少なくとも買収だけでもかなり悪質だということで捜査する可能性が高いんですけれども、そのうえ収賄の疑いもあるのではということになると、より一層捜査機関は弾みがつく可能性があるのではと私は見ています」と自身の見解を述べた。
▼公職選挙法 政治家が有権者に金品を与えて投票や、選挙運動を依頼することを買収行為として禁止している。選挙の有無に関係なく、食事などの提供も制限されている。買収行為はした者もされた者も3年以下の懲役か禁錮、または50万円以下の罰金に処される。選挙の立候補者が買収した場合は4年以下の懲役か禁錮、または100万円以下の罰金となり、刑が確定すると当選無効に。また実際に支払っていなくても、約束しただけで違反となる。