関東では珍しいしゃべくり漫才。独特のオーラと鋭い言語センスでファンのみならず芸人をもうならせる。埼玉・大宮ラクーンよしもと劇場を主戦場に、今では関東芸人の一大勢力となりつつある「大宮セブン」(マヂカルラブリー、すゑひろがりず、タモンズらで構成)のメンバーとして、ユニットを引っ張る。「THE MANZAI」「THE SECOND」などでの活躍で実力は折り紙付き。高校1年からずっと一緒に頑張ってきたソウルメイト、文田大介(44)と根建太一(43)に現在地を聞いた。(取材・構成 江良 真)
【囲碁将棋インタビュー(1)】
◆◆ 大宮セブンのブレイク、きっかけはマヂラブ村上がキレたから!? ◆◆
―大宮セブン、すごい盛り上がりですね。
根建「いやー、すごいことになってますよね。今度、映画が公開されるんですよ」
―「くすぶりの狂騒曲」(12月13日より公開)でしたね。
文田「いよいよ来るところまできたなっていう感じで(笑い)」
根建「大宮に行くまでの経緯はいろいろあったんですけど、まあ入っておいて良かったな、と思ってます(笑い)」
―でも、最初はお客さんもなかなか入らず大変だったと聞いています。
根建「そうなんですけど、大変なのは本当にそこだけで、僕ら的にはお客さんが入らないからやめようとか、なんか変えようとか、そういうのは思わなかったんです。いいメンバーが揃ってたから楽しかったし」
文田「ただ、変化の起点になったのはマヂラブの村上くんがキレたからなんですよ」
―??
文田「ネタ以外のコーナーは全部作家さんが考えていたんですけど、村上くんがある日コーナーがつまらなさすぎる!ってキレたんです。それで芸人が順番でコーナーを考えるようになって。言った手前必死だったし、芸人同士でアイデアを出すようになったから、真剣度も違って。そのへんから状況が変わり始めましたね。そうこうしてるうちにまず、すゑひろがりずがブレイクして、お客さんが増え始めました」
―さらにマヂラブがM-1を獲って…。
根建「それから連日満員になりました(笑い)」
―どうですか?一緒にやってるメンバーが優勝したことへのあせりなどはなかったのでしょうか?
文田「それがね、本当になかったです。むしろ自信になった。ずっと一緒にやってきてるから、マヂラブでもできるならおれたちも!という変な自信がついて(笑い)」
根建「その後のザ・セカンドでも妙に自信持ってできましたね。それもいい結果につながったのかもしれません」
◆◆ 2人のキューピットはマンガ「月下の棋士」 ◆◆
―お2人は神奈川の東海大相模で出会われて、ずっと一緒にやっているというのは本当にすごいです。
文田「五十音順でも前後で、根建は入学式の時にぼくの前にいました。でも、仲良くなったのは1年の夏前くらいからですかねえ」
根建「ぼくは付属中学から来たんで、最初はその仲間と話してたんですよ。でも、付属中組はなんかイキってるんですよ。仲間同士で固まって。なんかそれがイヤで、そのぼくの空気感が伝わったのか、いつの間にか友達がいなくなっていました」
―(笑い)
文田「ぼくは高校からなんです。周りに友達もいなくて、あまり人付き合いも良くないので、最初の1学期で浮きましたね」
―早くないですか?(笑い)
根建「異様な浮き方でしたね。やたら前に出てしゃべるけど、今風にいうと空気が読めないみたいな」
文田「割と授業中に声を出しちゃうタイプで。落ち着きがない生徒っているじゃないですか。急に帰っちゃったりとか。いま思うとF1レーサーが公道で走ってたみたいな感じです」
―よくわからないけど、なんか危ない気がしますね(笑い)
根建「で、ぼくも浮いてたので、文田がけっこうしゃべりかけてくれたんです。それからけっこう2人で一緒にいるようになって」
―コンビ名の由来になる囲碁将棋部に入られたのはなぜですか?
文田「その前に中学で野球部に入ってたから、野球部に入ろうと思っていたんです」
―強豪校なのでセレクションみたいなのはなかったのですか?
文田「うちは一般でも入れるんですが、とりあえずセレクション以外の希望者は2週間バックネット裏で見学するんです。そしたら、とんでもないレベルなわけですよ。1日目鈴なりだった見学者が半分になり、2日目はさらに半分になり、ぼくも3日目であきらめました」
―やはり東海大相模はすごいんですね。
文田「でも、部室はほしいなあと思って」
根建「ぼくらが仲良くなったきっかけがマンガの“月下の棋士”だったんです。じゃあ、囲碁将棋部に入ろうかと」
文田「ほぼ廃部状態だったんです。だからぼくらが入部を希望したら顧問の先生がめっちゃイヤそうな顔してました」
根建「顧問外れられると思ってたから」
―(笑い)
文田「自由にできる部室もできて、楽しい日々だったんですが、2年になる時にぼくたち、新入生には入ってきてほしくなかったんです。自分たちのテリトリーを守りたかったから。だから、オリエンテーションみたいなのでクラブ紹介があるんですが、そこで“絶対に入ってくるなキャンペーン”をしようとなったんです。“ほんと厳しくて1年生は将棋なんかさせないし、コマ拾いさせるし、ずっと腕立て伏せとか地味な稽古ばかりだぞ”みたいな。当日、運動部の直後にぼくら囲碁将棋部が文化系の一発目だったんです。強豪ラグビー部や強豪野球部が練習は厳しいけど充実した学生生活を!みたいな話をした後に、ぼくらでした。そしたらめっちゃウケた」
根建「たぶん、強豪運動部の紹介がフリになったんでしょうね(笑い)。うちは全校生徒2000人くらいで、体育館にほとんどが集まっていたんですが、体育館が揺れるくらいウケました。いま考えたら、それがぼくらにとってお笑いの道に進む動機になったかも、と思います」
―なるほど(笑い)。で、無事にテリトリーも守られた?
文田「それが、本気で将棋やりたいヤツが3人も入ってきました」=(2)へ続く
◇囲碁将棋(いごしょうぎ) 文田大介(ふみた・だいすけ)1980年(昭55)6月20日生まれ。神奈川県茅ヶ崎市出身の44歳。根建太一(ねだて・たいち)1981年(昭56)3月23日生まれ。神奈川県横浜市出身の43歳。2004年4月に芸人デビュー。11年に「THE MANZAI」決勝大会に出場し注目を集める。18年1月からユニット「大宮セブン」に選出。以降、大宮ラクーンよしもと劇場を主戦場にテレビでも活躍。昨年「THE SECOND」でファイナルに進出し、改めて漫才の実力を示した。