将棋の藤井聡太竜王(22)=王将など7冠=に佐々木勇気八段(30)が挑む第37期竜王戦7番勝負第5局は28日、和歌山市の和歌山城ホールで2日目が指し継がれ、先手・藤井が91手で勝利した。対戦成績を3勝2敗として4連覇へ王手。第6局は12月11、12日、鹿児島県指宿市の「指宿白水館」で指される。
終局後のインタビュー、そして大盤解説会場でのあいさつで「佐々木ワールド」を全開させた。
4手目に角道を止め、雁木(がんぎ)へ誘導したのは佐々木だが、「出だしはどうなるか分からなくて。もしかしたら、こちらが振り飛車もあるかなと思った」。前回後手番の第3局はダイレクト向かい飛車を採用した。居飛車党の佐々木が居飛車相手に飛車を振るのは2017年以来7年ぶりの変化球。ところが今回選択した雁木は、藤井が8連勝中の得意戦法だった。
「1日目に細かいミスがあったが自分には分からない。その辺りが指し慣れてないところかな」。不慣れな戦型を2勝2敗の天王山で採用するしかなかった。勝率上不利な後手番での戦型選択の難しさを改めて印象づけた。
大盤解説会場でのあいさつでも「冨田先生(誠也五段)の出番が少なくなると心配した」。この日の投了時刻は午後4時21分。持ち時間8時間から6時間40分しか消費せず、投了した。大盤解説会場での解説役の出演時間に差し障ると心配したそうだ。
加えて、同じく会場を訪れていた、雁木を得意戦法とする井田明宏五段(27)を引き合いに「雁木が得意な井田さんに聞いてみたい」。2日間の対局疲れを感じさせずに快活に振る舞い、「和歌山は初めてきたが、ほろ苦デビューになった。また頑張りたい」。
1日目午後3時のおやつにはパンダロール、シューパリ、五十五万石を選択。「トリプルおやつ」という新手が関係者を驚かせたが、その不思議言動は指し手と共に話題を提供している。