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「おむすび」対立と協調 そして拒絶と…

スポニチアネックス 2024年11月29日 8時21分

 【牧 元一の孤人焦点】11月29日放送のNHK連続テレビ小説「おむすび」第45回で俳優の橋本環奈(25)が演じる主人公・米田結と俳優の山本舞香(27)が演じる同級生・矢吹沙智の協調が描かれた。

 19日放送の第37回で、ギャルのメークと衣装で専門学校に初登校した結に対し、沙智が「あんた、なめとん?」と苦言を呈して以来、沙智としては対立の関係にあった。

 制作統括の宇佐川隆史さんは協調への移行について「王道と言えば王道と言えるかもしれない。しかし、やはり頑張っている人を支えたいと思うのは自然な感情だと思う。それを声高に表現するのではなく、さりげなく表現したかった」と語る。

 あの場面の直前、沙智は、専門学校の教室で一生懸命に翔也(佐野勇斗)のための献立作りに取り組む結の姿を目撃していた。

 宇佐川さんは「沙智は結が彼女なりに頑張っていることを知り、自分ができることはやろうか…と考える。それは大きな感情ではなく小さな感情の流れかもしれないが、それこそが人間の良いところだと思う。あのシーンには、その自然な感情の流れが表れている」と説明する。

 初登場以来ずっと対立を表現してきた山本はあの場面で正反対の協調の表現を求められた。芝居の難易度は決して低くなかったはずだ。

 宇佐川さんは「山本さんは本当に真面目な人で、現場で『これで良かったのでしょうか…』と言っていた。私は声を大にして『素晴らしかった』とお伝えした。沙智は完璧な人間ではないから悩み揺れ動く。演じる山本さんもお芝居の時に悩み揺れ動く。自分が揺れ動くからこそ、揺れ動く沙智を表現できる。山本さんは誠実で、人として素晴らしく、そのお芝居も間違いなく素晴らしかった」とたたえる。

 この回にはもう一つ印象的な場面がある。結の姉・歩(仲里依紗)が阪神淡路大震災で亡くなった親友の渡辺真紀(大島美優)が眠る墓を訪れ、真紀の父・孝雄(緒形直人)に「私、お墓参り、やめませんからね」と伝える。

 25日放送の第41回で歩は孝雄から「もう、ここには来んといてくれ」と言われていた。

 宇佐川さんは孝雄の人物像について「制作前に震災で被害に遭われた方々を取材させて頂いた。孝雄の造形には、震災のことを忘れられない方々や思い出したくない方々と、私たちとの距離が反映されている。孝雄は他人を拒絶する。なぜそこまで拒絶するのか、私たちは完全に理解することはできない」と話す。

 現在、拒絶が描かれているのなら、ドラマとしてこの先に受容が描かれるはずで、それを緒形と仲が表現することになるだろう。

 宇佐川さんは緒形と仲の芝居について「素晴らしい。自然と共鳴し合っている。芝居を合わせるというより空気を合わせるという感じ。その場でお二人にしか作れない空気感が出来上がっていく。お二人ならではだと思う」と話した。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。

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