1966年の静岡県一家4人殺害事件で再審無罪判決が確定した元プロボクサーの袴田巌さん(88)が29日、後楽園ホールで試合を観戦した。車椅子で会場入りすると、第2試合を南側前方から見守り、15年3月以来に“聖地”を訪れた。
支援を行ってきた日本プロボクシング協会は、袴田さんが後楽園ホールでいつでも観戦ができるよう「袴田巌シート」を設置。この日、同シートから観戦することはなかったが、リング上であいさつした姉・ひで子さん(91)は「やっと無罪判決が決まりました。死刑囚ではなくなりました。58年戦って、本当に皆様の応援と支援のおかげの結果だと思っている。この場に巌と来られてよかった」と感謝した。
支援活動を続けてきたWBC世界バンタム級王者の中谷潤人(M・T)も来場し袴田さんと初対面を果たした。当初はともにリングに上がる予定だったが、袴田さんの体調を考慮し急きょ中止に。ひで子さんは「朝は喜んで蝶ネクタイまでして、リングに上がるつもりでいたが、急に機嫌が悪くなってしまい…これも拘禁症の後遺症だと思う」と残念がった。
それでもリングサイドで「おめでとうございます」と伝えたという中谷は「ともに報告の場にいさせていただいたのはありがたいこと。いい瞬間をともにさせていただいた」と万感の思い。「僕自身にとって人生を発揮する場所がボクシングだと思っている。いつか自分の試合も見ていただいて、何か感じていただければうれしい」と話した。