◇明治安田J1リーグ第37節 神戸1―1柏(2024年11月30日 三協F柏)
明治安田J1リーグは9試合が行われ、昨季王者の神戸は敵地で柏と1―1で引き分け、勝ち点69で首位を守った。1点を追う後半55分、FW武藤嘉紀(32)が起死回生の同点弾。FW大迫勇也(34)のPK失敗など敗色濃厚だったチームを救い、連覇へ王手をかけた。優勝決定は12月8日の最終節に持ち越し。町田は京都を1―0で下し、同66に伸ばして初昇格初優勝の可能性を残した。
1点を追う後半55分、ゴールネットを揺らした武藤にとっては固唾(かたず)をのむ4分間だった。「正直、オフサイドだと思っていました。倒れた選手は僕は見えていなかったので、諦めていた」。長いVAR判定を経て迎えた同59分、ゴールが認められるとユニホームを脱ぎ、神戸サポーターが陣取るゴール裏へ一目散に駆けた。
「感情が爆発してしまった」。武藤が興奮するのも無理はない。試合終盤は、まさに天国と地獄を行き来するような展開だった。まずは後半43分。エリア内で武藤が倒されてPKを獲得。絶好の同点機で、大迫の右足シュートは大きく外れた。膝をついて顔を覆ったエース。そして、武藤が左足でネットを揺らした後半55分の一発は、当初は副審のオフサイド判定によって無効とされていただけに、喜びもひとしおだった。
前半5分の失点も含め展開も流れも向かない一戦。「このまま終わってしまうんじゃないかという怖さがあった」という。同時に「今までサコ(大迫)くんが救ってきてくれた。彼の気持ちをくんで、何とかチームとして1点取りたい気持ちはあった」。その執念が、最後の最後でミラクルを呼び起こした。
PKを外しながらも同点につながるポストプレーで貢献した大迫は「決めなきゃいけないし反省します。でも次、勝つだけなんで。切り替えてやります」と前を向いた。武藤は「目の前でトロフィーを逃すわけにはいかない。勝利のために、全てをささげたい」と力を込めた。大きな勝ち点1を積み上げ、12月8日の最終節・湘南戦へ向かう。ゴールテープはもう目の前にある。
(飯間 健)